出発の日

「準備できた?」


忘れ物チェックを済ませた母さんと叔母が、僕を促す。筆箱も宿題も、絵の具も筆もパレットもキャンバスも全部カバンの中だ。いつ出発しても大丈夫。


「うん。」


叔母の車で空港へ向かう。

この1週間、あっという間に終わってしまった。

きっとこの夏休みも、この1年も、高校生活もあっという間に終わって大人になってしまうんだろう。


この場所に来て、スイに会えて本当によかった。


二人で過ごした1週間の心地よさと、それを繋ぐ堤防の空気を思い出した。


いつもの堤防を車で通る。

今更少し寂しくなって、窓の外を眺める。


すると、僕の目に映ったのは見間違えるはずのない、大切な1人の少女の影。


思わず窓を開けて身を乗り出す。






青空の下で微笑む彼女は、まだ見えない星に向かって思いきり手を伸ばした。


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夏と夜空の1等星 猫野ぽち @temi_1409

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