幕間 二度目の失態を犯したシュレド大臣の末路
主が不在の王の間で、以前と同じようにシュレド大臣は頭を抱えていた。
その整った顔を歪ませていて、血の気が引いた表情を見せている。
「はあぁぁぁあ!? ゴルドーの奴、例のアレがバレて捕まっただとぉぉお!?」
それはシュレドにとって予想外の出来事だった。
シュレドは周囲に賄賂を送って根回しをしていて、奴隷を使った地下闘技場も一部の貴族たちとの秘密の共有として上手く機能していたのだ。
宰相の娘をゴルドーが見初めるというアクシデントもあったが、そのくらいは金と暴力と権力でなんとかなるだろうと踏んでいた。
実際、よっぽどの例外でもない限りゴルドーが捕まるということはなかっただろう。
「しかも、あのノアクルが生きていた……。信じられない……いったいどうやって……。もしかして敵国が用意した影武者か……? くそっ、問題が山積みじゃないか!! もし、このことが知れたら私は……」
「このことが知れたら? どうだというのだ、シュレドよ」
興奮していたために気付かなかったが、いつの間にかジウスドラ王子がやってきていた。
「ひっ!? これは、その、あのぉ……」
「ゴルドー。それに兄上のことだろう?」
「は、ははは……さすがジウスドラ殿下です……」
シュレドとしては気が気ではない。
二度目の失態という無様な姿を晒したら、どうなってしまうのか想像に難くないからだ。
「兄上のことは確定情報でもないしな。問題はないだろう」
「そ、そうですよね! そうですとも! 風説の流布に惑わされるなんて、王侯貴族のすることでは――」
「だが、ラストベガ島領主ゴルドーの失態については大いに問題があるぞ。これも推薦したのはシュレド、貴様だったな?」
「い、いえいえいえいえいえいえ! 推薦は……たしかに……あの、そのぉ……しましたがぁ……そんなに仲良くなくてぇ……」
「子どものように笑える言い訳だな。懇意にしていると言っていたのを、オレは覚えているぞ」
「そ、それは!!」
さすがに言い訳できないレベルまで来てしまっている。
シュレドは慌てふためいてしまう。
「しかも、重要なポストにいるアルヴァ宰相の娘の件……ゴルドーに連絡したのは貴様だよなぁ?」
「れ、連絡しましたが、ゴルドーの奴が言うことを聞かなくて……ハハハ……困った奴です……」
「そして、しびれを切らしたアルヴァ宰相が直接乗り込んだ。偶然にも娘が救出されていたタイミングだったからよかったものの、そうでなければアルヴァ宰相が怒り狂ってゴルドーを殺し、それが引き金となって内戦が起きてもおかしくはなかったぞ」
「さ、さすがに大げさなのでは……」
「大げさものか。現にお前がバレていないと思っている
不思議なことに、ジウスドラはどこかそれを面白そうに話している。
シュレドとしては生きた心地がしない。
「そのような相手を怒らせたとなれば、シュレド……貴様はどう責任を取る?」
「せ、責任ですかぁ!?」
「兄上と同じようにゴミ流しの刑にして、本当に生き残れるか試してみるのもいいな?」
「ひぃぃぃ!! ご勘弁をぉぉおおお!!」
「なに、冗談だ。そんな急遽の処刑を決めるなど、普通はできぬからな。普通は」
「で、ですよねぇ! さすがジウスドラ殿下!」
ジウスドラは全く心が籠もっていない冷たい笑顔を見せた。
「では、頭を丸めろ」
「……は?」
「毛を剃れと言っている。ついでに全身の脱毛もするか?」
「あ、あの……それもご冗談ですよね?」
「ああ、アルヴァ宰相へ向けての冗談だ。愛娘への心労はさぞ辛かったろうに。お前の身体で笑みの一つでも提供してやれ」
シュレドは呆然とするしかなかった。
自分の外見には絶対の自信があり、髪型も毎日丁寧に数時間かけて整えている。
それを笑わせるためだけに剃れというのだ。
しかし、命には替えられない。
(それもこれもノアクルが私の人生を遮るから悪いんだ……! ノアクルさえ……!!)
シュレド、全身脱毛をする一時間前であった。
――――
あとがき
これにて第三章は終了です!
次回からは第四章に突入ですが、プロットを作ってからなのでしばらくお待たせすることになりそうです。
一区切りのご祝儀としてポイントをくれてもいいんですよ!?(チラッチラッ)
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