第2話  ④

一方、ユキの家では二人が彼の話をしていた。

「ねぇ!ハズキ帰っちゃったよ」

「うーん、やっぱり正直に言うのは不味かったのかも💦しかもなんか勘違いしてそだし」

「それよりさ、早く野菜スティック持って来て!」

ダンッダンッ! 

床に足を叩きつけウサウサは怒りを露にした。

ウサギは怒ると足を打ち付け不満を訴えるのだ。

「あっごめんごめん、忘れてた」

人参を美味しそうに頬張りながら彼は続けた。

「にしても、巴瑞季君て男前だねー」

「見てたの」

「隙間から覗いてた」

「うーん、たしかに顔は良いかもしれないけど」

「それに高身長でお金持ち、俺よりずっと良い男じゃん。なんで付き合わなかったの?」

「何言ってんの?確かに彼は良い人だけどさ、やっぱり友達なんだ。それ以上にも以下にもなんない」

「そっか」

「ビール飲む?」

「ウサギなので、止めときます✋」

「やっぱり私、おかしくなったと思われたかな?」

「多分ね、でもあいつはまた来てくれるよ」

「なんで?」

「なんとなく」


ユキはウサウサを抱きかかえながら晩酌を始めていた。

あの日、雅臣は本当に帰ってきたのだ。

ただし姿はウサギ、モフモフのパンダウサギである。


「なあ、ユキ……お願いしたいことがあるんだ」

「なに?」

「俺、やり残したことがあるんだ」

「そうだよね」

「しかも五つも!」

「結構あるね」

ユキは微笑してうんうん頷きながら聞いていた。

「じゃあ、叶えよっか。全部」

「いい?」

「もちろん」

「やった!なら早速なんだけど一つ目のお願い、してもいい?」 

「私に出来ることならなんでも」

「制服デート願います」

「へぇっ!?」

すっとんきょうな声をユキがあげる。


斯くして物語は始まった。

ウサウサが願いを叶える物語

たった一月(ひとつき)あまりに儚い二人の最後の時間。


宇佐美雅臣は覚悟を決める。


必ず彼女だけは幸せにしてみせる。


第二話 終

 

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