第11話 お泊まり会続行!

 フライドチキンの油を指につけて調べて見みると、浮かび上がるのは内側にあった白い紙だけだった。


「これ、フライドチキンの油じゃ足りないよね。お兄ちゃん! 台所に行って、サラダ油をぬすんできてよ!」


「サラダ油って?」


「お母さんがいつも使ってるやつ! サラダ油だよ! オリーブオイルじゃないからね!」


「わかった!」と答え台所に行くと、トイレから戻ってくるお母さんに見つかってしまった!


 ヤバイッ!


がく? 台所で何してるの?」


「えっと……。そ、そう! アイスでも食べようかな、なぁんて!」


「自分の部屋で食べなさいよぉ? リンの部屋はよごしちゃダメだからね。あの子はちゃんとしてるんだからっ!」


「は、はーい! もちろんだよ」


「もう。それと、今日は夜更よふかししてもいいけど、明日の昼には解散かいさんだからね」


「え?! 明日の昼に解散!?」


「言ってなかったけ? 明日はおばあちゃんの家に行くからはやめに解散って?」


 戸惑とまどう僕にあっさりとそう言って、お母さんはさっさとリビングのドアを開けてママーズ達のところへ戻っていった。


 うそだろ!? なんてことだ。タイムリミット65時間なんてまだ余裕よゆうだと思っていたら、リーくん達は明日の昼には家に帰っちゃう?! ってことはその後はリンと二人で謎を解かなきゃいけないってことなのか?!


 僕はお母さんから今聞いた話をはやくみんなにしたくて、二階のリンの部屋に急いで戻った。


「大変なこと聞いちゃった!」


 リンの部屋のドアを開けるなり、僕は大きな声でみんなに言った。


「お兄ちゃんサラダ油わかんなかったの?」


「あ、サラダ油……。いや、それよりも大変なことをいまお母さんから聞いたんだけど!」


 僕はお母さんからさっき聞いた、「明日の昼にはお泊まり会は解散」と言うつらい事実をみんなに伝えた。


「マジか! 俺っち夜解散だと思ってたし!」


「うん!」


「僕も!」


「私はなんとなくそう思ってたけど。でも、この状況じょうきょうじゃみんながいなくなったらやだな!」


「リン、そうだよな!みんなで一緒に見つけ出したいよな!」


 しばらく「ああだこうだ」と、なんとかお泊まり会が続行できる案はないかと相談した結果、リンが、「お兄ちゃん、ここは私にまかせてくれる?」と言い、一階のママーズ達のもとへ向かった。なんならこのすべての謎が解けるまで、みんなとは一緒にいたい。きっとリンはその辺もうまくやってくれるはずだと思っていたら、しばらくしてリンが嬉しそうに戻ってきた。


「お母さん達オッケーだって! しかも、19日の夜にむかえにくるようにしてきたよ! これで最後までみんなで怪盗キューピーに立ち向かえるよね!」


「「「「すげ〜!」」」」


すごすぎるぜリン! でも、それってどうやったんだ?」


「ふふふ。みんなで夏休みの宿題を19日までに完璧かんぺきに終わらせるからいい? って聞いてみたんだよ」


「えええ!? まさか、無理だって! まだドリル何にもやってないし!」


「俺っちは、ま、どっちでもだけど」


「リーくんはいいよ! 明るい不登校で学校行かなくてもいいんだから!」


「僕は、あと感想文くらいかな」


「まさやん、マジで?」


「僕はあと、漢字ドリルが半分……」


「こうちゃんまで……」


「お兄ちゃんは?」


「え……っと…………………………………………計算ドリルと漢字ドリルが全然やってない。あと作品作りも……」


「え? 聞こえなかった? なんて?」


「……めちゃくちゃ、やばいってこと……」


「それはしょうがないな、ガッくん! がんば!」


「学校に行かないリーくんが言うなー!」


「俺っち、何が宿題かも知らねーもん!」


 くそっ! まさか三日間で全部宿題を終わらせる羽目はめになるとは!


 いや、絶対無理だ。

 そんな量じゃない。

 だって本当に全くやってないに等しいんだから!


 チーン……


 終わった……。夏休みの宿題が終わることなんて無理すぎる。


「大丈夫だよ! お兄ちゃん! 宿題終わってなくてもお母さんに怒られるのはお兄ちゃんだけだから! 終わってなくてもお泊まり会続行にはなんの問題もないからね!」


 嬉しそうに言うリンに僕は「そうだね」とだけ答えた。ここは僕の家だから、僕が宿題終わらなくても問題ないんだ。


 それを見越みこしてのママーズ達への提案ていあんか!

 

「さすがだよ! リン!」


「みんなで怪盗キューピーを見つけ出そうね! だって私たちはピンチでもガチで楽しむことができるガッチーズなんだから!」


 僕たちはおたがいに顔を見合わせ、少してれくさそうに、へへっと笑ってから、また手を重ね合わせ「ガッチーズ!」と気合を入れた。


 早速リンが持ってきてくれたサラダ油を丁寧ていねいに白い紙にって、浮かび上がってきた変な模様をパズルのように組み合わせる。なんだか本当に探偵団みたいだ! なんて楽しく思っていたら、全部くっついたのをみて、僕は少しだけ怖くなった。だって、これは間違いなく、怪盗キューピーに近づいている。




「これって、もしかして?」


「「「「地図!?!?」」」」



 

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