第10話胸の谷のナンデシュカ

凛とLINEの遣り取りが楽しい。

明日は土曜日、どこに行こうか?

伊勢神宮でも行くか!中原は、

【明日、伊勢神宮へ行きませんか?】

【え、伊勢神宮?いいですよ!】

と、昼休みにLINEをいじっていた。

既に、9月15日。中原拓也は9月1日付けで、

営業課の係長になった。

総務課に用事があり、3階まで書類を渡しに行った。

水原が、

「先日はすいませんでした。調子にのり過ぎて」

と、中原に謝罪したが書類の入った封筒を渡すと、無言で2階に降りて行った。

泣きそうな水原に後輩の田中美樹が慰めた。

「美樹ちゃん、ありがとう」

「あんな、男よりいい男いますよ!」

「係長の事、悪く言わないで」

「分かりました。今夜、飲みましょう」

「うん、ありがとう」


昼の3時、タバコを吸おう席と立ち上がると、伝票がどうの、領収書がどうのと、経理課の丸山いずみが言ってきた。

「係長、先日は大変申し訳ありませんでした」

「……」

「……」

「領収書通りに処理しろよ!」

「用途不明なんですが」

「どうせ、弓削か、坂本のババア連中がごねてるんだろ?とっとと帰って、ババア連中に言ってやれっ!」

「分かりました」


丸山は、中原さんの不機嫌な顔を久しぶりに見た。アァ~係長がどんどん離れた行く気がした。


「中原さん、部長がお呼びです」

「こっちは、もう帰るよ!いたら。呼んでこいだろ?」

「し、しかし、部長の指示ですので」

「君、入社何年目?」

「5年です」

「僕が入社した時、加藤部長はまだ20代で平社員だったの。その時からの付き合いだから、大丈夫」

「何か、深刻らしい表情してましたよ!」

「しょうがねえなぁ」

中原は 4階の本部長室に向かった。

9月から営業部統括本部長の加藤がデスクにいた。


コンコンコン

「どうぞ」

「部長なんですか?」

「君は今、お付き合いしている女性はいるかね?」

「い、いやぁ~、恋してる女性はいますが」

部長はタバコに火をつけ、

「お見合いしてみないか?」

「お見合い?」

「この子だよ!」

「!!こ、この子は……」

「そう、馴染みの居酒屋千代の凛ちゃんだよ」

その写真には、何故か浴衣姿で写っていた。

「部長、是非!アイラーブュー」

「アイニーデュー」

本部長室を出たのは、5時15分。

いつもの居酒屋千代に向かって、凛と話ししていた。最近、千代はバイトを使っているので、ババアの千代や、凛と話機会が増えた。

だが、ババアにバレ無いように、世間話しかしなかった。

居酒屋の店員と結婚したんだよな、羽弦常務は。そんな事を考えていた。

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