第126話 屋根
トリストの身体の成長は、天井を突き破ったところでようやく止まった。
だが……。
いくら何でもさすがにデカいって。
これじゃあこちらの打撃なんて、虫が触れたぐらいにしか感じないだろう。
「参ったぜ」
俺が思わず呟くと、トリストが両腕を振り回して残った天井を次々に破壊し始めた。
俺はその破壊を止めるでもなく、とにかく被害を受けないよう避けながら言った。
「おい、自分ちは壊したくないんじゃなかったのかよ」
すると天井をほぼ壊し終えたトリストが、不敵な笑みを浮かべて言ったのだった。
「もうここはいい。こんな館など他にいくらでもあるからな」
俺は瓦礫がバラバラと崩れ墜ちる中、トリストの巨体を見上げた。
デカい。十メートルはある。
完全に二階分の体格だ。
すると、トリストの足下の床がメキッという音を立ててめり込んだ。
トリストの体重に床が悲鳴を上げている。
するとトリストがニヤリと笑った。
「ふむ、これでは戦いづらいな」
トリストが上を見上げて言う。
この建物は三階建てだ。
今立っている場所は二階部分で、天井を突き破ったから、さらに上にあるのはもう屋根だけだ。
つまりトリストは屋根を突き破って外に出るつもりだ。
だがその瞬間、俺の頭の中が閃いた。
チャンスだ。
俺は咄嗟に瞬間移動を発動させた。
瞬間的にトリストの足下へたどり着く。
その途端、トリストの身体がふわっと浮き上がった。
俺はトリストの足に手を伸ばす。
俺の手とトリストの足が触れた瞬間、目の前にステータスウインドウが開いた。
そこには、『飛行術 コピー済』と出ていたのだった。
トリストは突然足下に現れた俺を見て驚き、次いでしまったという顔をした。
俺は逆にトリストを見上げ、ニヤリと笑った。
トリストは舌打ちを一つ打ったものの、すでに事は終わっているため、そのまま屋根を突き破って上昇していったのだった。
俺は笑いをかみ殺しながら、新たに得た能力を発動させた。
「飛べっ!」
その瞬間、俺の身体が爆発的に上昇を開始した。
だがそのあまりの速度に、俺は驚き慌てた。
「ちょっ!速っ!」
見上げると、トリストの巨大な脚がもう目の前だ。
俺は慌てて身体をよじった。
すると、ギリギリのところでトリストを躱すことに成功した。
俺はひとまず胸をなで下ろし、能力制御に務めた。
するとなんとかコントロールに成功して、空中に止まることに成功した。
俺はトリストを見下ろし、言ったのだった。
「いやあ、なかなか難しいね。でも、おかげでコピーすることが出来たよ」
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