第163話 情報集め
翌日。
安宿で一泊した俺達は、三人で手分けして情報集めへと動くことにした。
ラルフは手当たり次第聞き込みを行うようで、俺は情報屋に行って詳しい人物から情報を貰いにいく予定。
あとは……個人的な用事になるが、昨日ギルドマスターに教えてもらった『イチリュウ』なる武器屋も行きたいところ。
カルロとの戦闘後、金もなかったため素手で戦っていたからな。
スキルのお陰で素手でも戦えているが、やはり剣は持っておきたい。
金も貯めてきたし、この間まで愛用していた細身の鋼の剣よりも良い武器を使いたいと思っている。
そんなことを考えながら、俺はとある酒場へとやってきた。
王都にいた情報屋も、とあるバーの一室で商売を行っていたからな。
酒場には色々な人が集まるため、情報を集めるには持ってこいの場所。
早速中に入ってみると、朝だというのにまだ盛り上がっており、昨日の夜から飲み続けているであろう人達が酒を片手に語らっていた。
そんな人たちを横目に、俺は酒場のマスターらしき人物に話を伺うことに決めた。
「すまん。少し話を聞いてもいいか?」
「おっ? なんだい、坊主。酒の提供ならもう終わってるぞ」
「酒についてじゃない。情報を欲しいんだが、この街の情報屋がどこにいるか知らないか?」
「情報屋? 情報屋なら……おーい! バリー! この坊主がお前に話があるんだとよ。もしかしたら酒代を貰えるかもしれねぇぜ? ――あの酔っ払いに聞いてみな。酒代を奢れば教えてくれるかもしれねぇぜ?」
マスターはそういうと、大量の食器やジョッキを持って店の奥へと行ってしまった。
そんなマスターの代わりにやってきたのは、朝なのに店でドンチャン騒ぎをしていた男だった。
かなり酔っぱらっているようで、足元をふらつかせながら俺の下までやってきた。
「んお? 坊主が俺様になんのようだ?」
「情報屋を探している。このことをマスターに伝えたら、あんたを呼んでくれたって訳だ。教えてくれれば酒代くらいは出そう」
「それは本当か!? いいぜ。酒を奢ってくれるんなら喜んで教えてやる。……『ラッシュブルグ』って店に行ってみるといい。そこにノーファスト一の情報屋がいる」
「『ラッシュブルグ』だな。そこのお店はどこにあるんだ?」
「大通りを進んで看板を見ていけば分かる。――それよりも酒の金をくれ!」
情報屋についての情報をくれた酔っ払いに、銀貨一枚をくれてやり、俺は酒場をあとにした。
予想通り、情報を得ることができたな。
この情報の真偽はまだ分からないが、行ってみる価値はあると思う。
門を潜ってすぐに見えたあの大通りを目指し、俺は歩を進めた。
大通りへと出てきた俺は、人混みを掻き分けながら『ラッシュブルグ』の看板を探して回った。
普通の店も露店も無数にあり、看板も入り乱れている中、『ラッシュブルグ』の看板を見つけるのに一時間ほどかかったが……ようやく見つけることができた。
汚らしく古臭い建物の二階。一階は何やら魚を売っている鮮魚店のようで、その上の階に『ラッシュブルグ』があるようだ。
今にも崩れそうな階段を上り、『ラッシュブルグ』なる店を目指す。
特に情報が記載されていなかったが、王都のようにバーのような店かと思ったのだが……。
扉を押し開けて中に入ると、奥に机が一つと大きめのソファが見え、手前には様々な本や書類がまき散らされているただの部屋だった。
――本当にここがノーファスト一の情報屋の店なのか?
あの酔っ払いに騙された可能性が高いが、まだ分からない。
誰かいないかを確認するため、俺は部屋の入口から大声で声を掛けた。
「誰かいるか? 聞きたいことがあって訪ねてきた!」
部屋の中は静まり返っており、俺の声だけが反響する。
一切の反応もなく人の気配もしないため、俺は部屋から出ようとしたのだが……。
突然、俺が入ってきた扉が開かれた。
振り向くと、入ってきたのは一人の汚らしいおっさん。
服装は作業着のようなもので、腰巻には一階の鮮魚店の名前が刺繍されている。
臭いも魚臭さが漂っているし、下の鮮魚店を営んでいる人が来たのか?
「ここは基本的に夜だけしかやってねぇんだ。昼は下で魚を売って稼ぎ、夜は情報を売って金を稼ぐ。……理に適ってていいだろ?」
いきなり入ってきてそんなことを喋ってから、奥の机へと向かうとドカッと座った。
手に持っていた革袋で給水をしてから、俺の方へと改めて向き直したおっさん。
パッと見では分からなかったが、このおっさんが情報屋の店主なのか。
見た目からだと信用しづらいが、見た目で判断していいことなんて何もないからな。
ノーファスト一の情報屋と紹介された訳だし、このおっさんから情報を頂こうか。
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