第161話 報告
俺は何度も教会へは来ているが、能力判別以外で来たのは初めてだな。
そんなことを考えながら、俺達は教会の中へと入った。
ノーファストの教会は、レアルザッドの教会と似た豪華絢爛な教会。
中も随分と広く、礼拝に訪れている人も多く見られる。
……やっぱりオックスターのあの教会が異質なのかもしれないな。
絶対に悪い人じゃないんだけど、神父がアレじゃ信仰する気持ちも薄れるのだと思う。
「あの神父に声を掛けてみるか?」
「そうだな。暇そうだし丁度良さそうだ」
講壇に立っている人ではなく、端っこで暇そうにしている神父に話を伺うことにした。
オックスターの神父と同い年くらいだが、身なりもキッチリしているからか受ける印象は大分違う。
俺はそんな、しっかりしてそうな神父に話しかけた。
「少し聞きたいことがあるんだがいいか?」
「こんにちは。ええ、大丈夫ですよ。なんでしょうか?」
「【銀翼の獅子】という冒険者パーティの墓を探している。何か知っていたら教えてほしい」
「【銀翼の獅子】……。ええ、知っていますよ。案内いたしますね」
まさかの一人目で知っている人物に出会えた。
あの女装ギルドマスターは、本当に正確な情報をくれたみたいだな。
教会の外を出て、裏手にある色々な墓の建てられた墓地に足を運ぶ。
墓地といっても綺麗に手入れが施されており、神聖な空気感が漂っているようにも感じる場所。
「このお墓が【銀翼の獅子】さん、三人が眠っている場所です」
「案内ありがとう。助かった」
「いえいえ。それでは私は失礼しますね」
頭を下げてから、教会へと戻って行った神父を見送り、俺達は墓をまじまじと見た。
【銀翼の獅子】の名と――レオン、ジャネット、ジョイスの名が彫られている
「本当に死んでしまったんですね。……まだ実感が湧かないです」
「俺もまだ信じられないが、墓が立てられてあるということは、遺体は無事見つかったみたいだな」
「それだけは唯一良かったですね。これでカルロが死体処理していたらと思うと……殺した今でも尚、恨み続けることになっていたと思います」
ヘスターが怒りの籠った目でそう語った。
俺はそんなヘスターの肩を数回叩き、【銀翼の獅子】に挨拶するように促す。
「……レオンさん、ジャネットさん、ジョイスさん、アルヤジさん。短い間でしたが本当にお世話になりました。見知らぬ私達にも良くしてくれたこの御恩、一生忘れません」
「俺も絶対に忘れない! ジャネットさん、ジョイスさん、アルヤジさん、そして――レオンさん! ご厚意で教えてもらった全てを活かして、俺は最強の冒険者になる! レオンさんの夢も背負って、これから生きていきますので……どうかゆっくりと休んでください」
ヘスター、それからラルフが、それぞれの思いを墓に向かって伝えた。
泣かないようにと堪えているが、二人とも目には涙を溜めており、その悲しさが俺にも伝わってくる。
「みんなは俺が巻き込んでしまったようなものだ。……いくら詫びても許されることではないと思う。命は一つしかないし、絶対に代えのきかないもの。アルヤジさんは最後慰めてくれたが、俺は一生全員の気持ちを背負って生きていく。――【銀翼の獅子】の仇であるカルロは殺してきた。それから、カルロを仕向けた俺の弟、クラウスも必ず殺す。……みんなは優しいから、そんなことを求めていないだろうけどな」
誰か一人でも生きていれば、恐らく全力で止めてきたと思う。
そのため、これは俺の自己満足だ。
だから――もう一つ、俺は【銀翼の獅子】の代わりにやれることを宣言する。
「クラウスへの復讐が終わったら俺は……弱い者のために戦うことを宣言する。この活動を【銀翼の獅子】がやっていたかどうかは分からないが、孤児たちのための受け入れ先や獣人奴隷の解放。裏組織も徹底的に潰して、弱い者を食い物にするもの達を殲滅する。だから、俺の成すことを天国で見ていてほしい」
そう宣言してから、俺はアルヤジさんの形見のネックレスを外し、綺麗な箱に入れてから墓のそばに置いた。
本当は一緒の場所に眠らせてあげたかったが、せめてもの気持ちで遺品のネックレスを置かせてもらった。
最後に三人で深々と頭を下げてから、俺達は墓をあとにした。
言葉にして宣言したことによって、身が引き締まった気持ち。
まずはクラウス。それから、ラルフやヘスター、【銀翼の獅子】が元々そうだったように、弱い者の力になれるよう全力を尽くすと心に決めた。
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