第79話 ジンピーのポーション
「ぜぇー、はぁー……。ぜぇー、はぁー……。ご、ご確認ください」
一度宿屋に戻り、十種類を摂取して能力判別をしたが上昇はなし。
また一度宿屋に戻り、残りの五本を摂取して――本日三度目の能力判別。
能力判別を終える度に、神父の顔色が段々と悪くなっている気がする。
若干心配になりつつも、俺は能力値を確認してみると……魔力が1上昇していた。
よし。とりあえず、これで五種類まで絞ることができた。
金もまだあるし、残りも識別しきってしまいたいところだが……。
流石に、神父の体力が持たないだろう。
今日はオンガニールの実の識別を行いたいし、新種の識別の方はとりあえずここまでにしておこうか。
「ありがとう。助かった。午後にもう一度くるから、また頼む」
「ぜぇー、はぁー。……ま、任せてください」
「ああ。次が最後だから、よろしく頼む」
神父にそう告げてから、俺は教会を後にした。
ここからすぐにオンガニールの実の効能を調べるのは流石に酷なため、まずはジンピーの摂取方法がないかを尋ねに、『旅猫屋』へ向かおうと思う。
棘が刺さらないように気を付けつつ、天日干しにしたジンピーの葉を持って、商業通りにある『旅猫屋』へとやってきた。
……シャンテルと話さなくてはいけないと思うと、少し気が重いな。
大きく息を一つ吐いてから、俺は木製の扉を押し開ける。
扉についている鈴がカランコロンと心地の良い音を鳴らし、その音に反応したであろうシャンテルがすぐに店の奥から顔を見せた。
「いらっしゃいませ! あ、クリスさんじゃないですか!! お久しぶりです!」
「久しぶりって、一週間前に会ったばかりだろ」
「いやいや、一週間も来てくれなかったんですよ? ポーションが駄目だったんじゃないかって不安でいっぱいだったんです!」
やっぱりノリが面倒くさいな。
このままだと本題に入れずにシャンテルの話が続きそうなため、俺は会話の流れをぶった切って無理やり質問をする。
「ジンピーの葉をポーションにする方法って知ってるか?」
「……ん? へ? じ、ジンピー? あのー……、ポーションが駄目だったんじゃないか不安だったんです!!」
「大丈夫だ。――それで、ジンピーの葉をポーションにできるかどうかを教えてくれ」
俺は笑顔でシャンテルに質問し続ける。
そこで諸々を察したのか、顎に手を当てながら思考を始めてくれた。
「うーん……。クリスさん。ジンピーってあのジンピーですか?」
「ああ。シャンテルからカーライルの危険な植物として、教えてもらったジンピーだ」
「毒のポーションを作りたいってことですかね?」
「半分合ってて、半分間違っているな。俺は毒のポーションが作りたいんじゃなくて、ジンピーをポーションにしたいんだ」
「……なるほどです! できると思いますよ! 色々と思考錯誤しないといけないと思いますが、基本的には毒ポーションを作る要領と同じだと思いますので!」
ニュアンスが分かりづらかっただろうが、しっかり伝わってくれたようだ。
本当に作れるならば、お願いしない手はないな。
オーダーメイドになる訳だし、金銭面は少し怖いが……リターンが大きい可能性を考えれば、金は厭わないと決めている。
「それなら、その毒のポーションの生成をシャンテルにお願いしたい。頼まれてくれないか?」
「もちろん、常連さんとなってくれたクリスさんのお願いならお断りしませんが……。素材の費用がかなりかかってしまいますが大丈夫ですか?」
「金なら払うつもりでいるけど、大まかにどれくらいかかるんだ?」
「素材費だけで金貨一枚っていうところですね! もしかしたら、もっと安上がりになるかもしれませんが、一本のポーションを生み出すのにはそれぐらいかかってしまうんです!」
やっぱりそれぐらいはかかるよな。
作業工程はさっぱり分からないが、0から作ることの大変さは俺でも分かる。
「なら、手間賃込みで金貨二枚でどうだ? 素材費用に一枚で、製作費に一枚。悪くない話だと思うが」
「えっ!? そ、そんなに受け取れませんよ! 製作費で金貨一枚なんて大金!」
「そうか? じゃあ製作費は銀貨五枚でどうだ?」
「……え。……銀貨五枚ですか。……あー、あ、いやですね。もちろん十分すぎる額なんですが、つい半額って考えちゃってしまっただけなんです! すいません! 銀貨五枚で大丈夫です!」
「銀貨五枚が嫌なら、最初から金貨一枚で引き受けておけ。遠慮なんかして得するのは相手だけで、自分は何一つ得しないぞ」
「……本当にいいんですか?」
「ああ、構わない。それだけの作業を頼んでいる自覚はある」
「クリスさん、ありがとうございます! それでは遠慮なく、合計金貨二枚で引き受けさせて頂きます!」
俺は金貨二枚と、採取してきたジンピーの葉をシャンテルに手渡した。
「うへー、これがジンピーの葉ですか! よく採取してきましたね!」
「まぁ恐る恐る……って感じだな。それで、制作期間はどれくらいかかる?」
「一週間もあれば制作できていると思います!」
「分かった。じゃあ一週間後にまた取りにくるからよろしく頼んだ。……あー、あと、次来るときは俺のパーティメンバーも連れてくるから頭に入れておいてくれ」
「クリスさんのパーティメンバーですか? 分かりました! 楽しみにしておきます!」
こうしてシャンテルに依頼をしてから、俺は『旅猫屋』を後にした。
続いては、待ちにまったオンガニールの実の効能についてを調べる。
一体どんな効能を持つ実なのか。ワクワクが止まらない。
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