第69話 その後の処罰


「いってぇ。やっぱあの人数は無謀だったか」

「だから、大人しくしておこうって言っただろ?」

「でも、ラルフも参戦してくれただろ?」


 冒険者ギルドで大乱闘が勃発した後、結局どちらかが倒れるまで乱闘は続き、ヘスターの魔法が決め手となって、一応は俺達の勝利で終わった。

 しかし冒険者ギルドで派手に暴れたせいで、俺は一週間の依頼の受注禁止処分を受けた。


 俺達が絡まれた側だったこともあってこのぐらいで済んだが、下手すれば出禁になってもおかしくなかったな。

 今日は乱闘を起こしただけで何もできなかったし、軽いが傷も負った。

 新生活は、幸先の悪いスタートとなってしまったな。


「そりゃ、お前が大勢に囲まれてるのにぼーっと見てられるかよ! でもな、あんな大人数に普通手を出すか? クリスの信念は分かったけど、せめて相手を選んでくれ」

「相手を見て喧嘩を買ったつもりなんだけどな。あの冒険者ギルドの一番上が、グリースのプラチナランクなのは分かってた。ゴールド以下の冒険者なら余裕で全員倒せると思っていたんだが、やっぱまだまだ弱すぎるな俺は」

「いやいや、十分だろ。少なくとも八人はぶっ倒してたぞ……。それより、明日からはどうするんだ? 依頼は受けられないけどよ」


 それに関しては問題ない。

 乱闘を引き起こした俺と、ちょっかいをかけてきたぬべーっとした顔の奴が謹慎処分を受けただけで、ラルフとヘスターは仲裁に入ったとされ、何の処分も受けていないからな。


「ラルフとヘスターは通常通り依頼を受けて、ランク上げに勤しんでくれ。今日の大乱闘で、流石にしばらくは手を出してこないと思うからな」

「分かりました。……でも、また何かされたらどうすればいいでしょうか?」

「とりあえず、明日の受注までは俺も一緒に行くから安心してくれ。また絡んできたら――そうだな。一人一人襲撃して、二度と逆らえなくしてやる」

「……こえーよ。一体、なにする気だよ」

「俺が怖いってことを思い知らすんだよ。あのグリースに従ってるくらいだ。束になってなければ脆いもんだろうからな」


 今回も相当ボコボコにしたから大丈夫だとは思うが、救えないアホの可能性もあるからな。

 

「絡んできた冒険者の処遇は分かった。……それで、クリスの方は明日からどうするんだ? 俺達の手伝いでもしてくれるのか?」

「するわけないだろ。俺は近くの森に籠る予定だ。ペイシャの森の代わりを見つけないといけないからな」

「こっちでも毒草食いをするつもりなのか?」

「俺の強化方法はそれしかないからな。元々、明日は森に行く予定だったし、このタイミングでの謹慎はむしろ好都合」

「好都合ってお前……。分かってちゃいたけど、反省の色なしだな」

「そんなの当たり前だろ。どう考えてもあいつらが全部悪い」


 思い返すと未だにイライラする。

 精神上よくないことから、俺は別のことをに思考を費やすため、明日の森での予定を立てることに決めた。


 明日向かう予定の森は、『カーライルの森』と呼ばれる場所。

 このオックスターから、東に数時間行った先にある深い森だ。

 乱闘前に見た依頼掲示板で依頼が張り出されていたことから、カーライルの森の入口付近は人が多くいることが予想される。


 ペイシャの森のように森の奥深くに入って採取することになるだろうし、しっかりと準備はしないといけないな。

 熊型魔物という危険な魔物はいたものの、ペイシャの森は超がつくほどの穏やかな森だったから、どうしても油断しがちになってしまう。


 ペイシャの森に入る感覚のままだと、カーライルの森で痛い目を見ることは確実だ。

 気持ちを新たにし、万全の準備を整えてから、明日のカーライルの森探索に向かおうと思う。


 …………ふふふ。それにしても本当に楽しみだ。

 一体、どんな有毒植物があるのだろうか。


 レイゼン草、ゲンペイ茸、リザーフの実以外の体力、耐久力、筋力を底上げするものもあるかもしれないし、まだ見つかっていない敏捷性と魔法力の上がる有毒植物が見つかるかもしれない。

 自作の有毒植物図鑑を眺めながら、俺はカーライルの森に心を躍らせつつ、眠りについたのだった。


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