第33話 発見
宿屋に戻ってから未識別の有毒植物を三種類食べ、俺は教会へと足を運んでいた。
色々とやることをやっていたため、既に日が落ち始めており、教会が開いているかどうか微妙な時間帯となってしまっている。
中からは人の気配がしないが、俺はゆっくりと扉を開けて、教会の中へと入った。
昼間も差し込む日差しが幻想的なのだが、夕方だと更に綺麗に目に映る。
夜の星の光が差し込む教会も見てみたい気持ちになりつつ、俺は無人の教会を進んで右奥のいつもの部屋へと入る。
……勝手に入ってきてしまったが、鍵が開いていたし大丈夫だよな?
恐る恐る備え付けのベルを鳴らすと、しばらくして奥の扉からいつもの神父が入ってきた。
「またいらしてくれたんですね。今日も能力判別でよろしいでしょうか?」
「ああ、よろしく頼む」
流石にもう慣れたのか、大きな反応を見せることもなく、対応してくれた顔立ちの良い神父。
俺ももう手慣れた手つきで、神父から催促される前に冒険者カードと金貨一枚を手渡した。
「確かに金貨一枚頂きました。それでは始めさせて頂きます」
神父が水晶に手を当て、いつものように一瞬だけ水晶が光り輝く。
「終わりました。ご確認お願い致します」
「ありがとう」
神父から冒険者カードを受けとり、俺は早速能力値を確認する。
―――――――――――――――
【クリス】
適正職業:農民
体力 :11(+8)
筋力 :6 (+8)
耐久力 :7 (+4)
魔法力 :1
敏捷性 :4
【特殊スキル】
『毒無効』
【通常スキル】
なし
―――――――――――――――
よしっ!
俺は目の前の神父に見えないように、小さくガッツポーズをする。
良かった。能力値が二つとも上昇している。
これで今回食べた三種類の植物の中に、体力と耐久力を上昇させる植物が混ざっていることとなるな。
体力を上昇させる植物と耐久力を上昇させる植物の二種類か、それとも両方上昇させる一種類かは分からないが、これで一気に効率が上がる。
もう判別しなくとも、十分絞り込むことが出来たのだが……ペイシャの森へ出発前に、後一回は能力判別しようと思っている。
本来は明日出発する予定だったが、明日はラルフとヘスターを王都へと送り出し、その後に森へ籠る準備の買い出しと識別を行おう。
俺は気分良く教会を後にし、二人の待つ宿屋へと戻った。
「ラルフから軽く事情を聞きました。治療費の件、駄目だったんですね」
「ん? まだ駄目と決まったわけじゃないぞ」
「でも治療費が白金貨二十枚で、最後の希望だった人もとんでもない悪人だったとか……」
部屋に入るなりヘスターが話しかけてきたのだが、やはりラルフの説明では全てが伝わりきれていない様子。
当のラルフはというと、拗ねているのか分からないが寝てしまっている。
「これから治療のお願いをする相手が悪人で、落ちぶれた人間だってのはあってる。だからこそ、手術を行ってもらえる可能性があるんだ」
「…………なるほど。その悪人の方に交渉すれば、格安で請け負ってくれるかもしれないということですか」
「そういうことだ。その分のリスクもあるだろうが、話によれば腕だけは確かなようだし、これを逃す手はないと俺は思った」
「確かに、そう考えると望みは全然ありますね! すぐに探しに向かうんですか?」
「行きたいところなんだが、俺は極力王都には近づきたくない。ブラッドなる人物を探して交渉するところまで、ヘスターに頼みたいんだが受けてくれるか?」
「もちろんです! 全てクリスさんにやってもらう訳にはいきませんから」
「それなら良かった。旅費は全て俺が出すから、ラルフを連れて王都に行って来てくれ。頼んだ」
「すいません、旅費を出して頂いて……。はい、任せてください!」
ヘスターに捜索と交渉をお願いできたし、これでひとまずは安心できるだろう。
旅費を既に手渡したし、明日にはレアルザッドを発つと言っていた。
交渉結果を楽しみにしつつ、俺は二人が戻るのを待とうと思う。
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