第8話 レアルザッド
森を出た俺はひたすら公道を沿って歩き、王都メルドレークの隣街であるレアルザッドまで辿り着いていた。
飛び出てきたデジールの街から決して離れている訳ではないが、一ヶ月も経っていることを考えれば十分に離れた距離に位置している街。
王都の隣街ということもあって栄えていて、人の流れも多いことから身を隠すには適しており、【剣神】の天恵を授かったクラウスが王都に召集されることを考えれば、動向を追うのにも正に持ってこいの街。
まだ詳しい計画は立てていないけど、身の安全を確保出来ている内はレアルザッドを拠点にするつもりだ。
俺は門の入り口に出来ている列の最後尾に並び、レアルザッドへの入門審査を待つ。
デジールにも門はあったけど出入りは自由のため、俺にとっては初めての入門審査。
レアルザッドは王都であるメルドレークと比べて四分の一ほどしかないと聞いていたけど……見た限りでは十分すぎるほどに大きな街だし、王都の隣街ということもあって、入門審査待ちの待機人数を見ても栄えていることが分かる。
これの四倍以上も大きいというメルドレークに関しては、正直乏しい俺の頭では想像すらつかない。
予想以上の人だかりにボロボロの服装が恥ずかしくなり、身を縮こませながら待っていると、ようやく俺の番が回って来た。
逃亡者の身でありながら服装もおかしいということもあり、心臓を跳ね上がらせながら荷物と身体検査を行い、自身の身分の証明を行う。
身体検査を行った警備兵からは疑いの目を向けられつつも、危険なものは護身用の剣すらも持っていなかったことから、あっさりと街の中へ通してもらえた。
人が多いが故、マニュアル通りの検査になっていたから通れたが、人が少なく警備兵に時間の余裕があれば、確実に身辺をキッチリと調べられただろうし危なかったな。
かなり危険な橋を渡った気がするが、街の中に入ることが出来たのなら結果オーライ。
俺は堂々とレアルザッドの街へと入った。
入門してまず見えたのが大きな噴水。
それから土の場所がないほど地面が綺麗に舗装されていて、街の至るところに街灯が建てられてある。
一つ一つの建物も真新しく、道にゴミが一つもないのも驚きの光景だ。
生まれ育ったデジールも決して田舎ではなかったのだが、ここレアルザッドは少しレベルが違う。
キョロキョロと街の景色を楽しみながらも、俺は賑わいを見せている商業地区へと向かった。
今日はオークのジャーキーしか食べておらず、お腹が空いたため食料を購入したいし、泊まる宿も早急に見つけなければいけない。
それから衣類もなんとかしなければならないし、ペイシャの森では手作りの武器で代用していたが、クラウスに叩き折られた木剣の替えとなる武器も買わないと駄目だ。
そのためにとにかくお金が必要なのだが……俺の今の全財産は銀貨三枚と銅貨が数十枚。
衣類、食料、そして本日分の宿代までなら今の手持ちでも賄えるだろうが、流石に心もとなさすぎる。
冒険者になってお金は稼ぐつもりでいるけど、すぐにでもお金が入る保障はないからな。
……俺は小さい鞄をチラリと確認し、逃げる際に盗み鞄に押し込んだもの見る。
母さんのアクセサリーと父さんの懐中時計。
色々な感情が渦巻いたが故に思わず盗んできてしまった物だが、これを売って身銭を手に入れるしか今の俺の生きる道はない。
盗品を売るのは最終手段だと思っていたが、今がその最終手段を使うとき。
覚悟を決めた俺は、まずは買い取りを行ってくれそうなお店を探すことに決める。
とりあえず商業地区の表通りをぐるりと回って確認したところ、一軒だけだが買い取りをやってくれそうなお店を見つけることができた。
表通りの一番目立つ場所にある、最大手の道具屋『ゴールドポーン』。
煌びやかな外観だが人の出入りも良く、遠目からチラッと確認しただけだが、様々な種類のアイテムに中古品まで取り扱っているのが分かった。
中古品を売っているということは買い取りも行っているだろうし、最大手であればぼったくられる可能性も低いはず。
売るには完璧なお店と見た俺は、煌びやかな外観に一瞬躊躇いつつも交渉へと向かったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます