2-24:勝利という手向け
グリーンが辿り着いたとき、すでにクロヌリは体中から黒い粒子を零れさせながらふらふらと歩き、倒れるところだった。
駆け寄り、“ポーション”を振りかけるも、クロヌリの体の崩壊は止まらなかった。
「……我らが女王はここまで読んでいた、か……流石、我が女王だ。」
クロヌリはもう開かない目を閉じ、そう呟くと口元を覆っていた布を煩わしそうに外す。
「デスティアの私はここで消える……我らが女王の最後の命令だ。グリーン、手を貸せ。」
崩れていく手にグリーンは手を重ねる。
【中位権限NPCクロヌリがユニークジョブ:特急配達員の”加速”スキルを教えてくれました。スロットにセットしますか?】
システムウィンドウが開き、Cスキルのセットを促してくる。
「お前……!」
「私の力は……これから先も我が女王を守る力となる。……それ以上の幸せなど、ない。」
「わかった。まずはこの戦いに勝って、お前への手向けにしてやるよ。」
クロヌリの体が完全に消え、黒い粒子が霧散する。
「我らの勝利だ!ハイデリオン傭兵団の誇りとは力!ハイデリオン傭兵団の誓いは“全ての人間とティラーのために!”」
「「「「「ハイデリオン傭兵団の誇りとは力!ハイデリオン傭兵団の誓いは“全ての人間とティラーのために!”」」」」」
グリーンがプレイヤー達を一瞥すると、いまだに警戒していたポラリスが叫ぶ。
「グリーンさん!残念でしたね!僕たちの勝ちです!」
「それはどうかな?あと、25秒、24、23、……。」
「……?何を数えて……?」
「アタシの勝ちって事さ。“加速”する!」
グリーンは“加速”の力で戦場を離脱する。
MPのない団長やプレイヤー達はそれを眺めることしかできなかった。
「何のつもり……どうして!?」
【ミッションクエスト】
第一次デスティア軍侵攻!狙われたジー・アクルックス!に参加しよう!
【勝利条件】
デスティア軍の軍団長の討伐:0/1
【ウィニングラン】
迫りくるビスデスの被害を抑える
ビスデスは軍団長討伐後30分かけて南都からいなくなります。
【敗北条件】
3時間の戦闘時間の経過:残り時間00:00:18
南都の人口が戦闘前の3分の1に減少すること:人口残56%
傭兵団の拠点の崩壊:0/3
残り時間18秒、人口56%はまだいい。拠点は手付かずなのもいい。
だがしかし、“軍団長の討伐”が終わっていないのは理解できない。
「まさか……!軍団長は別にいた!?」
驚愕が波紋となってプレイヤーに広がっていく。
クロヌリは軍団長じゃなかった。
その事実を受け止められずにいたのだった。
「フフフ。それじゃあ今回の侵攻は私たちの勝利ということね?」
戦場に甘い、女の声が響く。
それは頭上から見下ろしていた。
「私はミュラークイーン・アマリリス。デスティアの楽園、東都が女王。そして君たちの言う“ラスボス様”よ!」
グリーンに名乗ったときと同じように、アマリリスはプレイヤーを見下すように、そう宣言したのだった。
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