第33話 ドラゴンスレイヤー再来(1)



奈緒もだいぶ育ってきたが、まだまだランキングが低かった。レベル上げだけではランキングが思うように上がっていない。


涼真さんは奈緒と同じレベル3だがランキングが意外と高い。


それは戦争への貢献度も重要な要素ではないかと考えはじめた。

敵を倒すだけでなく、装備などで仲間を手助けすればランキングは上がる?と解釈した方が自然かも知れない。


また、プレイヤーとの攻防、敵の領地を占領したり敵の侵略を守ったりすると貢献度が高いのかもしれない。

ただ単に安全な場所の領地を取ってレベルを上げているだけでは、ダメなのか・・・? そうだとすると、奈緒の育成方針を間違えたか? 俺が手伝っていると奈緒の貢献度が得られないかもしれない。


ただ、レベルが高くなると出来る幅が広がるので俺はまずレベル上げを優先させた。

奈緒がレベル3になり【魔力】がDとなり、更に鉄の杖を装備したので攻撃力が段違いだ。これからは、敵プレイヤーとの接触も奈緒の育成方針の1つとして考えることにした。



そんな矢先、あの学生同盟が再びやってきたのだった・・・。




〜健太side(ドラゴンスレイヤー)〜



亮平と隆史が殺られた日のことを今でも思い出す。あのとき俺たちは最強の同盟で敗けるはず無いと思い込んでいた・・・。


だが実際蓋を開けると、華川町の山中の序盤を占領しただけで、半分の同盟員が亡くなるという悲惨な運命を辿った。


しかも、大学で仲の良かった親友たちを2人も無くしてしまった。当初は自暴自棄になりかなり荒れた時期もあった。

しかしそれを乗り越え、新たな仲間を誘い再びドラゴンスレイヤーを最強の同盟へとするために動いた。


新たに3人の同盟員『浩二、裕介、淳史』を勧誘し、更に異世界人たちとの闘いも経験。

積極的に戦闘経験を積んで、つい先日5人ともがレベル4となったのだ。

今ではlv3土地を占領できるまでになっている。



前回は自分たちの強さを過信しており、みんな好き勝手にバラけて戦っていた。

今回はみんな見える範囲で侵略し何かあれば互いにフォローできる体制を取って挑む予定だ。


ターゲットは前回同様に華川町の山中の広大な土地を確保している『葛城 風馬』だ。


あの敗戦以降こいつのことをチャットや地図を使って情報収取している。その結果、日本人に対してあまり侵略を行っていないことがわかっている。


磯原西側に広がっている無法地帯を中心に活動しており、基本的に異世界人ばかり戦っているようだ。

日本人であれば、自分から攻め込まなければ、基本的にあっちから侵略してくる事は無いようだ。


そのため、あまり『葛城 風馬』自身の情報が無かった。

どういった風貌で、ステータス振りがどうなっているのかなど、知りたい情報はたくさんあるが、出てこない。


前回の闘いを考えると、配下モンスターを上手く活用し罠にハメて攻撃するタイプの人物であると推測できる。


そうなると知略型と考えられる。

となると、自分自身は引きこもり配下を強くしている可能性が高いな。


これは、あくまでこれまでの状況証拠より導き出した想定であって、必ずしも正解で無いが予想を立てておくのは必要だろう。




「おはよう。今日から華川町の山林を攻略することになる。みんな気を引き締めてくれ。」

「わかってるって。」

「うん任せてくれ、そのために準備してきたからな。」


健太がみんなに話を振り、新たに入った浩二と淳史が返事をした。直人と裕介は共に頷いた。


みんな大規模侵略に対して、気持ちが高ぶっているようだった。


「なお、今回は全員がフォロー出来るような距離を保ちつつ進行する。多少ゆっくりになってしまうかもしれないが、一人ひとりの安全を優先することとする。何かあったら、すぐにチャットで連絡を入れてくれ。」


「そうだね。前回はみんなでバラけて進行して連携が取れなかった事が、一番の敗因と考えられます。この5人が連携すれば敗ける事は無いです!がんばりましょう。」


健太が簡単な方針を示し、直人が補足しみんなを盛り上げる。


「そうだな、やってやろうぜ。」

「いくぞー。」

「「「「「おぉー」」」」」




〜涼真side〜



今日は朝から東側の僕の守備領域が大盛りあがりだった。


相手を確認すると以前やってきたドラゴンスレイヤーの一行だった。

数も100や200じゃない、1,000は超えているモンスターの数だった。


広範囲に侵略してくるのではなく、みんなでフォローできる距離を保ちつつ、固まって着実に進軍してくる。


着実にゆっくりと川岸に沿って進軍してくる。



僕のモンスターは多数いるが捌ききれないだろう。

風馬くんのモンスターも予備軍として私の分拠点に派遣されているので、それを使えばどうにかできるだろうが・・・。


まず、相手の出方を確認するため1箇所の領地へ500体のモンスターを「待機」させる。

すると次々にドラゴンスレイヤーの同盟員が集結して数的に不利な状況に陥った。


モンスターが全滅する前にすぐさまモンスターを全員撤退させた。相手にその領地を献上する形になるが、大した損害ではない。



次に5箇所へそれぞれ相手と同数の300体ずつのモンスターを「待機」させた。

すると、1箇所あたりのモンスター数が互角となった。ここで互いのモンスターを潰し合えば、更に増援が可能な私が有利だ。


しかし、相手は5箇所中、3箇所のモンスターを撤退させたのだった。


その撤退したモンスターが他の2箇所の援軍に向かい、相手が数的有利となる形になった。

こちらが不利な状況になったので、被害が拡大する前に全員モンスターを撤退させた。

もちろん領地は相手に献上する形になる・・・。


では、1箇所にモンスターを全集中する方法も良いが……。

それだと、決定打を与えられる切札ともいえるプレイヤーが、相手には5人もいるので時間が経過するうちに劣勢となるのが目に浮かぶ。


もう少し試したみようか…。




〜健太side(ドラゴンスレイヤー)〜


侵略が上手くいっていた。


葛城は数的有利になるようにモンスターを調整しているようだが、俺たちは決め事をしておりそれがうまく機能していた。


・戦闘は基本1人1箇所とする。

たとえ出撃できる部隊が、4部隊いるからといっても、1人で4箇所を攻めないこと。

これをすることで、ピンチのときに自分の部隊のモンスターを増員でき死ぬリスクを下げられる。


・敵の数がこちらと同等数以上の場合、無理をせず撤退を第一優先とする。

ただし、みんなと連絡を取ってフォローしあい数的有利を保てるならその限りではない。

今回は、上手くフォローしあい数的有利な環境を保ちつつ進行できている。


・戦闘の開始タイミングを合わせる。

これは、自分では戦闘に参加しない配下重視型のプレイヤーにたいする対抗策だ。

プレイヤーが配下の視野をステータス画面で共有できるのは、1体のみである。

そのため、相手に負荷を与えるためにタイミングを合わせて戦闘に入る。

敵の各部隊のリーダーが指示を受けて判断しているが、突発的な事象が発生した場合、モンスターでは対処出来ない。

そのため、タイミングを合わせて「占領」を行う事によって、相手に思考に負荷を与えミスを誘う。



今回は、同盟員とフォローしあい、相手の思考力に負荷を与えるため、フェイクを織り交ぜた行動をとった。

こちらが5つの手を打つに対し敵は1人で対処しないといけないので、そのうちパンクしてミスが増える隙きを狙う。



戦闘開始から6時間、良い感じに進行できてきている。

そろそろ、最初に占領した領地の保護期間が切れそうなタイミングで、一時退却することにした。

この保護期間が切れた場所を敵に取られると、逃げ場を塞がれてしまうので、そうなる前に戦略的な一時撤退だ。


3,000体ものモンスターを領地の守備として「待機」させている。

そして、本格的な侵略の意思表示のため、最前線に要塞をつくりはじめた。


< 侵略の例 >

◯ 深緑の妖精の領地

▶︎ ドラゴンスレイヤーの領地(保護期間中)

◆ ドラゴンスレイヤーの領地(保護切れ間近)

◎ ドラゴンスレイヤーの要塞(建設中)

空白 高lv土地

    

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◯ ◯◯ ◯ ◯  ◯ ◯

◯◯◯  ◯◯ ◯◯ ◯◯

◯  ◯▶︎ ▶︎▶︎ ▶︎▶︎ ◆

◯◯ ◯▶︎◎  ▶︎▶︎ ◆

◯ ◯ ▶︎ ▶︎▶︎  ▶︎▶︎◆

◯  ◯◯   ◯ ◯◯◯

◯ ◯  ◯◯ ◯◯ ◯◯   

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



それから2日後も快進撃は続けて行った。

相手は俺たちの戦略にハマっており、なす術がない状況だ。


「なあ健太、今日も侵略から5時間近く経過するからあと3〜4回占領したら引き上げようぜ。」

「そうだな。安全第一で少し早めに撤退するか。」

「そうしようぜー。今日は酒でも飲もうかなぁ。」

「おおぉいいね。今日は飲もうぜ。みんなもどうだぁ〜?」


裕介が早めの撤退の提案をしてきたので、俺は了解した。

その後、浩二と淳史が今晩の晩酌の話をし始め、みんなで飲むことになった。


「じゃ、次行くか。」

「OK、もう少しだからがんばりますか!」

「みんな行くよ、準備はいいか?」

「「「「OK(いいよ)」」」」


またみんなでタイミングを合わせて、「占領」を開始した。










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