<ルキアルート> 四章 王国騎士の名に懸けて

 情報を集めるために姉は町へと繰り出し、私もお手伝いするつもりだったが借りていた本を返してきてからお願いと頼まれたため図書館へと向かっていた。


「あれ、フィアナ」


「え、ルキアさん?」


誰かに声をかけられたので振り返るとそこにはルキアさんの姿が。


「こんなところで何してるんだ? あ、もしかしてまたお仕事探しか」


「今日はお仕事探しじゃないよ。ちょっと図書館に本を返しに。ルキアさんこそこんなところで何してるの」


王国騎士の隊長である彼がこんなところで何しているのだろうかと疑問を抱いたのでそのまま尋ねる。


「オレはパトロール中。最近変な奴がこの辺りをうろついてるって情報が入って来てな、それでパトロールを強化してるんだ」


「変な人?」


「あぁ。だからフィアナもあんまり一人で遅くまで出歩かないようにな」


「うん」


変な人がうろついてるのか、前にレオンさんも人攫いがいるって言っていたし気を付けとかないとね。


「……それより、その量を一人で持って歩いて大丈夫なのか?」


「平気だよ。これくらい持って歩くのはいつもの事だから」


私の手に持っている本の入った袋を見て彼が言う。本を大量に借りる事なんて私にとってはいつもの事だから全然平気なのだけれど。


「いや、その細腕でずっと持って歩くのは大変だろう。オレが持っていてやるよ」


「本当に平気だよ」


ルキアさんが言うと私の手荷物袋を持ち上げようと動く。そんな彼へと慌てて答えた。


「う~ん……ならこうしよう。オレが半分持ってフィアナも半分持つ。な、これならいいだろう」


「う、うん。それじゃあお願いするね」


まぁ半分ずつなら良いかなと思いお願いする。そうして彼が本の入った袋を一つ抱え上げるとにこりと笑う。


「そんじゃ図書館まで向かうとするか」


「うん」


ルキアさんあんなに軽々と持ち上げるなんてやっぱり王国騎士団に所属しているだけあって筋力があるのね。私なんて二つの袋を引きずらない程度に持って歩くのがやっとなのに。


彼と一緒に図書館に向かい本を返すと家まで送ってくれることとなり一緒に歩く。


「あ、そうだ」


「うん?」


私はルキアさんなら何か情報を知っているんじゃないだろうかと思い立つ。いきなり大きな声をあげた為か彼は驚いて私を見てきた。


「ねぇ、ルキアさん。噂で聞いたんだけれど隣国の王子様が行方知れずになってるって話、何か詳しいこと知らないかな? 例えば誰かが王子様の命を狙ったとか」


「もうそんな噂がこの町にまで流れてるのか……う~ん。確かに隣国の王子が乗った船が何者かに細工されていたって話はルシアから聞いたけど、それによってあいつが行方不明になってるのも確かだ。だけど、きっとどこかで生きているってオレは信じてる。そして全てを解決する時を待っているんじゃないかな。あいつの事だから何か考えてると思うから」


「ずいぶんと親し気に話すけれど王子様の事知ってるの?」


フレンさんの事を「あいつ」なんて呼び捨てにするなんてどんな関係なんだろう。


「あぁ。オレとルシアとあいつは中学が同じだったんだ。その時に仲良くなってな。だからオレもあいつが今どうなってるのか心配してるんだ。なぁ、フィアナ。オレの勘なんだけど、お前あいつと何か関係があるんだろう。だからどうしても情報が欲しいって思ってる。だからオレはオレの知りえる限りの事をお前に教える。あのな……」


彼が言うと周りに人がいないことを確かめてから私の耳に顔を近づけ内緒話をしてくる。ルキアさんから聞かされた言葉に私は驚く。


「それ、本当なの?」


「確証はないが、怪しいと睨んでる」


私の言葉に彼は神妙な顔で頷く。まさか、あの人が……そんな……。


「王子行方不明の事件王国騎士の名に懸けて必ず解決して見せるさ。だから何か困った事があったらいつでもオレを頼ってくれよ」


「うん。ルキアさん有り難う」


今すぐにでも話してしまいたいと思う気持ちを抑え込み私はあいまいに答えた。本当の事はまだ言えないけれどでも全てが解決したらその時はちゃんと話すからね。だから、ごめんね。


「ここまで送ってくれて有難う」


「おう、そんじゃまたな」


家の前まで送ってくれた彼へとお礼を言って別れる。そして私は先ほど聞いた話をフレンさんに伝えるために家の中へと入っていった。


「フレンさん。ルキアさんからある情報を聞いたの。あのね……」


部屋に入ると情報収集を終えて帰ってきていた姉もいて私は二人に先ほど聞いた話を伝える。


「それは本当なの?」


「ルキアさんは怪しいって睨んでるんだって」


「確かに、時期的には俺が行方知れずとなった時と被るから、怪しいのは確かだ……明日それが本当なのかどうか試しに行ってみるか」


驚く姉に私はルキアさんの言葉をそのまま伝えた。フレンさんの言葉に私と姉は顔を見合わせる。


「なら、私も一緒に行くわ」


「私も。フレンさんだけでいったら何か危ない目になったりするといけないもの」


「ティア、フィアナ……」


私達の言葉に彼が驚いた顔で見詰めてくるとふっと微笑む。


「分かった。よろしく頼む」


「「うん」」


そうして私達は翌日ルキアさんの話の真相を確かめるため王国魔法研究所へと向かうこととなった。


「よ、おはよう」


「ルキアさん?」


「ルキアどうしたの」


翌朝家の扉がうるさいくらいに叩かれるので慌てて玄関にかけていくとそこにはルキアさんの姿があって私達は驚く。


「昨日フィアナに話したことアレを確かめに行くんだろう。お前達だけじゃ危険だからオレも付いていこうと思って」


「どうしよう……」


「もう。これ以上隠し通すことはできないと思うわ」


ルキアさんの言葉に私は姉を見て尋ねた。それに姉は言うと彼へと顔を向ける。


「ルキア、あのね驚かないでほしいんだけれど……」


「うん。あいつがこの家にいる事だろう」


「え? フレンさんがここにいるって知っていたの」


姉が意を決して口を開くとルキアさんが答える。それに私は驚いて尋ねた。


「お前達ここ最近様子がおかしかったからな。何か隠していると思ってそんで昨日フィアナの話を聞いてピンと来たんだよ。行方不明になったフレンをお前達がかくまっているんじゃないかってね」


ルキアさんの言葉に私と姉はもはや言葉を失う。とりあえずこのまま立ち話も何なので中へと通しフレンさんにルキアさんに感づかれていたことを説明した。


「なるほど、命を狙われ魔法をかけられたがそれが失敗して犬になっていたっと。まさかオレが撫ぜ回していた殿がお前だったなんてな」


「今まで黙っていてすまないな」


話しを聞いて納得したルキアさんへとフレンさんが申し訳なさそうな顔で謝る。


「別に気にしちゃいないさ。お前だって大変なんだろうし……それより、これから乗り込むんだろう。オレも協力する」


「こうなってしまっては仕方ない。お前にも協力してもらう。もし俺の身に何かあった時は二人の事を頼むぞ」


「任せろって! 王国騎士の名に懸けて二人もそしてお前も守り抜いてやるからさ」


フレンさんとルキアさんは話し合うと二人して固い握手を交わす。そうして私達は家を出ると王国魔法研究所へと向かった。

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