第127話 ペンジェンの街 要注意人物
建物の中に入ると通路だったが、何日も体を洗っていないような匂いと糞尿のにおいが混じり酷い匂いだった。
『ヒスイ』
『うん?』
『兵士3人はどこにいる?』
『1人はそこの部屋にいる。残り2人右奥に階段があって、上がってすぐの部屋にいるね2階は兵達の部屋みたいよ』
ヒスイに言われた通り通路を歩き上の階を目指すが、あまりにもひどい異臭に何度も吐きそうになった。その為大気魔法を使い、空気中を漂う匂いの原因菌をすべて消した。
ヒスイに教えてもらった通り、階段を上がり廊下に出ると、扉がいくつかあった。神刀をアイテムボックスから取り出し一番手前の扉を開けると、机がたくさん並んでいるオフィスの様な部屋に2人の兵士がいた。
「なんだ君は」
「どこから入ってきた!」
2人と目が合うなり質問され、その瞬間2人が近くにあった武器に手をかけたため、こちらも神刀の柄に手を添えると、
『あ、まって、2人はヴィンザーの味方』
内通者ってやつか、慌てて手で制して2人の行動を止めた。
「まってください、自分はヴォーネス解放軍です、ヴィンザー殿の同志です」
「ん……?まて、何故俺らが同志だと思った?」
ここで答え方間違えると、内通している意味がなくなるな、どう答えるべきか?
素直に、精霊の力だと明かすか、ヴィンザーから聞いていると話すか?
後者の場合、嘘がばれた場合はやり合うことになるだろうな……
『ヒスイ』
『OK』
ヒスイの身体が淡く光りだし、2人の目にも映るようになった。
「私が居るからね~君達の事は私が教えた」
「なるほど、精霊使いか……、それにおまえ、秋津直人か?先ほどの悲鳴もお前がからんでるな?」
ぇ?なぜ自分の名を……?
『ヒスイ』
『ん~彼等鑑定持ってないよ』
じゃあなぜばれた?
「なぜ自分の事が?」
「教団内の警告書だよ、おまえさんはクラリス教団内の要注意人物だ」
要注意人物か、理由はドザズトアダンジョン単独踏破かな?それ以外に思い当たる節がない……
「ダンジョン単独踏破だからですか?」
「あぁ、秋津の着物を着た黒髪黒目ってのと似顔絵が一致したからな、自分の警告書見てみるか?」
「可能であれば?」
「かまわんよ」
そう言って1人の兵が、席を離れ本棚から1冊のファイルを持ってきた。
「今現在クラリス教団内で手を出す事を禁じられているのがお前さんと、オスカーだな」
そういってファイルの表紙を捲ると自分の警告書があった。そこには、自分の似顔絵と、特徴の部分に黒髪黒目の秋津の着物を着た人物と書かれ、その下には大きな字で手を出すなと書かれていた。
オスカーは納得できるが自分もそうなっていたのか、この情報は今後役に立ちそうだが、当面は狐の仮面をつけ、服装も変えて名無しで行動した方が良さそうだと思った。
「ありがとうございます。味方ならリンクル族の子達をエスティアに逃がすのを手伝ってくれませんか?」
「そいつは構わんが、手立てはあるのか?」
多くのリンクル族をエスティアに逃がす方法がないわけだが……
「停泊中の船を使うことは?」
「それ位は出来るが」
操船技術を持っているなら話が早い
「ならば、自分が港の防衛をするんで、その間に……」
「できるんだな?単独踏破でも相手は大勢いるぞ?」
いつだったか、ドザズトアダンジョン内での、終わらないアイアンゴーレムの事を考えたら、まだましだろうと思えた。
「大丈夫です」
「わかった、1Fの兵は何とかしたのか?俺ら以外にも持ち場を離れるなと言われてるやつらが3人いるぞ」
3人?建物内に居るクラリス教団の兵はあと1人のはずだが?
可能性は彼等がヴィンザーの内通者なら、リンクル族の中にもクラリス教団へ寝返っているやつが居るという事か?
急ぎ1Fに降りる必要が出てきたと思っていると。
『港に兵士達が戻ってきてる』
と同時に、外から“ピィーーーーーーー”という笛の音が聞こえてきた。
「まずいな、異変を察知されたか」
1人の兵がそう言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます