第121話 エスティアの街 住民の健康チェック
思っていた以上に、クラリス教団の兵達はテキパキと準備を進め昼過ぎには全軍街の周辺から居なくなっていた。
教会に戻り、教会裏の小さな広場でテントを張り、軽く腹ごしらえをして少し休むことにした。
どれだけたっただろうか?
教会の表の方が騒がしく目が覚めた。
『街の人達が君の創った像を見てざわついてる感じだね~あれだけの像とかないからね~』
ふと、像を作りまくって商売すればいいんじゃない?とか邪な考えが頭をよぎった。
『まぁ見ただけで安らぎとか得られるならざわつくか』
『うん~』
テントを張っていた場所から教会の表の方に行くと多くの人達が居て、領主のウォルスやリコリスとヴィンザーの親子も来ていた。
「ナット君これは君が立て直したのかい?」
最初に声をかけてきたのは領主のウォルスだった。
「そうですよ、祈り位ならできるようになっているでしょ?」
「そうだな、それよりも中の像だ、教会に入った途端、安心できる空気に包まれる」
やっぱり像が原因だった。
「そりゃ、そうなれるように作りましたからね……」
「そうか、他の教会の像とは全く異なる見た目だが何か意図はあるのかね?」
「特にないですよ、単に付与効果と合致するようにしただけですから」
「そうか……」
教会に入った事はあるが、どんなポーズだったかなんて覚えていなかった。
「エスティアから兵士たちは居なくなりましたよね?」
「あぁ、それは確認した。あとは君が所属する騎士団の到着次第この街はヴェンダル王国領になるな」
第1目標は達成した。
あとはオーレリアやイヴァンが到着次第今後のことを決めればいいかな?
とりあえず今は炊き出しをはじめよう。
「昨日同様に炊き出し行うのですが手伝ってくれません?」
「あぁ構わない、連日の炊き出しで食材は大丈夫なのか?」
持ち込みの野菜を大量にコピーしてあるから問題はなかった。
「大丈夫ですよ」
そう言いながら、大量の食材を出していった。
「これだけあればいいでしょう?」
「これだけの食材市民を代表して感謝する。本当に君は御使いなのだな」
リースが使徒だって紹介していたと思ったが、信じてもらえてなかったのか?
それとも使徒と御使いは意味違うのだろうか?
教会周辺に居た人たちが炊き出しの準備をしていった。
しばらくすると準備が整い炊き出しが始まった。
昨夜は領主邸に行ったり教会建て直しをしていたためか、街の人の様子を全く見ていなかったが、外傷がある人が多かった。
街の人の健康チェックするかなと思い、辺りを見回すと、片足を失ったヴィンザーが近くに居たので彼からはじめようと思った。
「ヴィンザーさん、ちょっといいですか?」
「ん?」
炊き出しの手伝い側に居たヴィンザーの元に寄った。
「教会まで付き合ってもらえませんか?」
「あぁ、構わん」
そういって、教会の中までヴィンザーと共に移動した。
教会の中には誰もおらず2人きりだった。
「どうした?」
「失った足戻したいと思いませんか?」
「!?」
言葉に出さないが、すごく驚いた態度を見せた。
「出来るのか?」
「出来るから呼んだんですよ」
「いくらだ……?」
「いらないですよ。ヴィンザーさん以外にも、この後街の人全員をチェックするつもりです。長い間医師が不在だったんでしょ?その対価として、街にすむ人全員を健康な状態に戻していく予定です」
「いいのか?」
「構いませんよ」
構わないから提案しているのに、疑い深いな、ただで失った足を治しますよといえば当然の反応か?
「わかった、頼む」
「義足を外してもらって良いです?」
椅子もテーブルもない教会だったので、急ぎ生前リビングで使っていた椅子をだした。
ヴィンザーは椅子に座り義足をはずした。
切断部分に触れ、神の手を発動させると、じわりじわりとゆっくりだが足が生えてきた。
「これは……」
「感触はどうですか?」
ヴィンザーは踏み込んだり、飛び跳ねたり色々して調子を確かめていた。
「問題ない、感謝する」
「それならよかったです。ヴィンザーさんにこの後の事任せても良いですか?順番にこちらに通してくれればいいので」
「承知した」
ヴィンザーは少しおぼつかない足取りで教会を出て行った。
どれだけ長い時間足を失っていたのか分からないが、リハビリ無で歩けることには驚いた。
その後は1人1人街の人達の健康状態をチェックしていった。怪我だけではなく病気もすべて治していったため気づいた人は自分に対して感謝していた。
殆どの者が栄養面に問題あったり、クラリス教団の兵士達の暴行などでの怪我をしている者が多かったが、像の効果で自分が診ている前で傷が治っていく状態を目にした。
包丁で指を切ったくらいなら、教会に入って数秒で傷が完治するな、リウマチなんかの進行性の病の場合はどうなるのかが気になった。
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