第53話 元男爵少年と元子爵少年
大分夜更けだが、奴隷商はまだ入れるだろうか?そんな不安を抱きつつも子爵家から脱出し奴隷商に向かった。
ランベル奴隷商前まで来るとまだ明かりが着いていたので扉をノックした。
「こんな夜更けに……、使徒様ですか?」
そういや未だに白衣と狐のお面つけっぱなしだったなとりあえずお面を外した。
「そうです。すいません、朝預けた子を引き取っても構いませんか?」
「かまいませんよ、むしろお願いたいくらいです。」
あ~俺は男爵だとか騒いでるのかな?
「あ~もしかして、意味不明な事騒いでます?」
「えぇ、俺は男爵だーとかなんとか……」
「ダァダァ」
ポーンタナ男爵という部分に反応したのだろう、元子爵の赤子が何か言いたげだった。
「その子は?」
「朝の子と同じ罪人ですよ。それじゃあ朝の子引き取ります」
「おねがいします。」
バーバラが歩き始めたので後について地下に降りていくと騒ぎ声が聞こえてきた。
「ここから出せー!」
夜なのに騒がしい、他の人達にどれだけ迷惑をかけてんだよ……、原因は自分にあるのは解っている。
ため息をつきながら騒いでいる男の子の元にいった。
「誰だ貴様!」
「誰だか、あなたを攫った者といえばいいですか?」
男の子は驚いていた。
「ダァダァ」
何か言いたそうな赤子状態の元子爵。何か言いたそうなので言葉に不自由のない5歳児に戻してやった。
「ポーンタナ男爵か、私だウォーレン・ポーコスだ」
「子爵様……」
「我々は鬼人族の誘拐の件で神罰が下ったのだ」
「この男がネア様の使いですか?」
元男爵の少年がこちらを見た。
2人とも自分たちが子供にもどっていても通じるのか?
「先ほどまでの私の姿を見ただろ?赤子から子どもに一瞬で成長させるような者がこの世界に居ると思うか?」
「いませんな……、神の御業か……」
「そういうわけだ、神罰が下ったと思って諦めろ」
「わかった。しかし懐かしい姿だな」
「おまえも人のこと言えんからな?」
なんか昔話に花を咲かせそうだな……
「あのお二人さん、アヴェナラ侯爵の所に連れて行くので話は後でお願いします……」
「だそうだ、クラット行くぞ」
「わかったが、開けてくれ」
案外男爵もいいやつなのかもしれないと思った。
「バーバラさん開けてもらってもいいですか?」
「はい」
それだけ答えると、直ぐに牢を開けてくれた。
どうするか、子どものまま連れていくか、2人とも赤子にしていくか?
「使徒様、こちらの子の服用意しましょうか?」
バーバラから突如声をかけられた。元子爵の少年の服装がバスタオル1枚だったから提案してくれたようだった。
「お願いしても良いです?」
「はい、しばらくお待ちください。」
2人を両脇に抱えて行くかな、車を出す事も考えたが目立ちすぎるし、そうするか、傍から見たら、誘拐犯に見られそうだ。
しばらくすると、2人分の服を持ってバーバラが戻ってきた。なぜ2人分?
「なぜ2人分なのです?」
「そちらの子だけぼろく、こちらの子は良いのをというのは気が引けたので」
あぁなるほど、元男爵少年は、かつては自分が着ていた古い服だったが、元子爵少年の為に持ってきた服は新品とも思えるようないい服だからか、
「心遣い感謝です。」
「いえいえ、それでは」
そういってバーバラは2人の着替えを手伝ってくれた。2人の着替えが終わると自分のお古を着ていた元男爵少年が
「着心地が全く違うな、まだこちらの方がましだ」
悪かったな着心地の悪い服で!
服を着せてもらった後奴隷商を後にした。
2人を両脇に抱えていくか、
「それでどうするのだ?」
「2人ともしゃべるなよ、舌を噛むからな?」
連続縮地を使い目にもとまらぬ速さでポーコスの街を後にした。
『ヒスイ、侯爵たちは今どこに?』
『君が最初に休憩しようとした。ポーコス方面とアヴェナラ方面の分かれ道のある川沿いの広場で野営してるよ。』
『あぁ、あそこかOK了解した。』
場所が解れば急ぐとしよう。
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