第49話 ポーコスの奴隷商
門番に教わった通り、噴水広場から北側に向かい左手の建物をみていると、ランベル奴隷商と書かれた看板が見つかった。
『悪魔憑きがここの地下にいる』
『了解』
扉を開けて中に入ると20代後半から30代くらいの女性が迎えてくれた。
「いらっしゃい、今日はどのような?」
「背中の男の子をおねがいします。」
「何か訳アリって事ね、ついてきてちょうだい。」
女性について行くと応接の間みたいな所に通され、座る様に促された。男の子を横に座らせ自分も座ると目の前に女性が座った。
「その子の身分が解るものとかあるかな?」
「この子の分はありません、代わりにこれを」
身分が解るものか、侯爵からもらったゴーレムの紋章を提示した。
「侯爵家の……」
「詳しいことは話せませんが罪人です。きつめの所へお願いします。」
「わかりました。その子の名前と年齢は?」
名前か、考えてなかったな……
「年齢は5歳ですが、名前は無いです」
名前が無いことを伝えると、女性がじーっとこっちを見てため息をつきながら応えた。
「わかりました。引き取り金額ですが大金貨5枚でいいですか?」
50万円位か奴隷とはそういうものなのかな?
相場が不明なので安いのか高いのかすらわからない。
「いえ、訳アリなのでいらないです」
「珍しいですね」
「もしあれでしたら、その金額を孤児院とかに寄付してください。」
「わかりました。では、そのようにさせてもらいますね。」
そういうと、女性が男の子に首輪の様なものを付けた。
「ほかに何かありますか?」
悪魔憑きが居るとヒスイが言っていた。ならばその人を見て見たい。
「奴隷達を見せてもらうことはできます?」
「構いませんよ。どのような用途をお考えで?」
考えてなかったな、購入前提で話が進みそうな予感だ。
「購入というよりも、健康状態を見て見たいと言ったところです。一応医術の心得があるので」
「そうでしたか、まぁ構いませんよ。その子も連れてきてもらえますか?」
男の子をおんぶし、女性の後について地下へ降りていくと牢屋の中で過ごす者、ある程度自由に過ごす者等様々だった。
「その子は罪人と言ってましたね、それでしたら開いている所に入れましょう。」
女性がまたしばらく歩き、1つの牢の扉を開けた。
「こちらに」
言われた通り、中に入り男の子を寝かせ、神の手を使い30分後位に意識を取り戻すようにした。
「その子ずっと寝ていますが、大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ、しばらくしたら目が覚めると思います。」
「わかりました。今まで見た奴隷達で気になる者はいましたか?」
「今の所は特にですかね」
ガリガリに痩せているとか見た目ですぐわかるような人は居なかった。
「でしょうね、商品価値が下がってしまうので最大限配慮しています。」
『ヒスイ?』
『この部屋には居ないよ、お隣の部屋こっちこっち』
そう言って自分の肩からふよふよ~っと飛び、奥のすかすかの本棚の所まで行き、本棚をぺちぺちし始めた。
『この棚の後ろに扉がある。』
隠し扉かい、たしかにその本棚の横はぎっしり本が収納されているのにもかかわらず、ヒスイが教えてくれた本棚はスカスカだ、おまけに下に横にずらしたりしている形跡がみられる。自分はヒスイが教えてくれた棚を指さした。
「あの棚の先を見せてくれます?」
女性の顔が険しくなるのが解った。
「どうしてそこに扉があると?」
「そうですね、横の本棚がびっしり収納されてるのに、その本棚だけスカスカって事と床にあるずらしたような形跡ですかね」
「一瞬で見抜くとは……、いいわ、ついておいで」
ヒスイが教えてくれているだけだし、人体の事ならともかく、そのほかの事は興味が無く全然ダメなのは自分が良く知っている。
女性についていくと、本棚を横にずらし、棚の背後から扉が現れた。
「ここから先に居るのは、君が気にするような子しかいないわ」
病気やケガをしている人達という意味だろうか?扉からかすかに腐敗臭がするのがわかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます