第三百三十三話 骨董品店
参拝を終えた俺達は、早速賑わいを見せている繁華街へと出て、情報探しへと移った。
今回は二手に分かれることはなく、ディオンさんと一緒に情報を探す。
また変なのに絡まれたら余計な時間を食ってしまうし、二人で動いた方が確実に絡まれるリスクは低い。
そんなこんなで、取っつきやすい露店の店主から聞き込みを始めることにした。
「すいません。少しお話を伺ってもいいですか?」
「ん? うーん……まずは何か買ってくれよ。お客さんになら喜んで情報を提供するぜ」
「それじゃ、肉まんを二つください」
「はい! まいどあり!」
毎度毎度は商品を買ってはいられないけど、最初の相手ということと小腹も空いていたため肉まんを二つ購入した。
俺は店主さんから受け取った二つの内の一つをディオンさんに渡してから、早速店主さんに質問をぶつける。
「約束通り、お話を伺ってもいいですか?」
「ああ、もちろん! そんなに長くは話せないけどね」
「ありがとうございます! 実は、この上にある寺院で働いている人を探していまして、誰か知り合いとかっていませんか?」
「寺院で働いている人? 悪いけど、知り合いはいないね。そもそも寺院で働いている住職は滅多に寺院の外に出てこないから、繁華街で探そうと思っても難しいんじゃないかな」
「そうなんですか……。それじゃあ、寺院の絵画については何か知りませんか?」
「あの大きな絵画のことかい? それなら知ってるよ。呪術師の話だろう? 童話の一つで、悪いことをしたら呪術師に呪われるぞーみたいな脅しをされたっけなぁ!」
懐かしそうに顎に手を当ててそう話した店主さん。
有名な話だからこそ、子供への脅しの一環としてこの都では昔から使われていたのだろう。
とりあえず知ってはいるようだけど、口ぶりからしてそこまで詳しい訳ではなさそうだ。
「そのお話について詳しく知っていたりしませんよね?」
「詳しくは知らないな。でも、こっちは知ってそうな人なら知ってるぜ」
「本当ですか!? 是非、教えて頂けたらありがたいです!」
「この繁華街にある『遊蛍堂』って店の店主だ。歴史が好きな爺さんだから、きっと有益な情報がもらえると思うぜ」
「早速行ってみたいと思います! 情報提供ありがとうございました!」
「こっちこそお買い上げありがとう。また利用してくれよな」
手を振って見送ってくれた店主さんに頭を下げてお礼をし、早速『遊蛍堂』といういお店を探しに向かう。
まさかの一人目から良い情報がもらえたし、肉まんを買ってまで情報を貰って良かったな。
「ルイン君、いきなり当たりの情報でしたね。肉まんも美味しいですし、一石二鳥です」
「ですね。本当にツイていました!」
「それにしても『遊蛍堂』というお店ですか……。一体どんなお店なんですかね?」
「この繁華街にあると言ってましたし、探せば見つかると思いますよ!」
「後ろがつっかえていなければ、もう少し詳しく情報を聞けたのでしょうが……並び直してでも聞くべきでしたかね?」
「いや、都での滞在予定期間は長いですし、観光も楽しみつつ気楽に行きましょう!」
「まぁそうですね。スマッシュさんも観光を楽しんでるでしょうし、私達も観光しながら『遊蛍堂』のお店探しをしましょうか」
皇国一の都の繁華街を楽しみつつ、俺とディオンさんは『遊蛍堂』のお店についての情報集めを行った。
一時間ほどかけて集めた情報によると、『遊蛍堂』は骨董品店のようで繁華街の東に位置する場所にお店があるらしい。
休みが多く営業日も不定期なようだけど、店主さんは休みでも基本的にお店にはいるみたいだし、行けば高確率で会えると思う。
お店が休みならゆっくりと情報を聞くことができそうだし、お店が休み且つ店主さんがお店にいることを願いながら、ディオンさんと共に繁華街の東へと向かった。
「ここが『遊蛍堂』でしょうか。中々に風情のあるお店ですよ」
「お店はどうですかね? ディオンさん、やっていそうですか?」
「えーと、『営業中』と書かれた看板があるので営業しているみたいですね」
『遊蛍堂』の看板が書かれたお店は、藁ぶき屋根で木造の古民家のようなお店。
一見、お店のようには思えないのだが、どうやらここが『遊蛍堂』で間違いない様子。
営業中のようだし、早速中へと入って話を伺いに行こうか。
珍しい引き戸の扉を開けてお店の中に入ってみると、様々な骨董品が所狭しと並んでいるのが目に入った。
歴史があって高価そうな物も非常に多く、蹴ったり踏まないよう足元に十分注意しながら勘定場へと向かう。
……うーん。勘定場にも誰の姿も見えない。
少し大きめの声を出して店主さんを呼んでみようか。
「すいません! 誰かいませんか?」
「……んお? お客さんかね? ちょっと待っとくれ。今行くからのう」
俺の声に反応して、店の奥の方から老人の声が帰ってきた。
どうやらお店の中には居たようだな。
ディオンさんと共にお店に置かれた骨董品を見ながら待っていると、杖を突きながらゆっくり歩いて来たのは俺よりも背が低いおじいさん。
相当に高年齢の方のようで、腰が曲がり過ぎて正面からでは顔を確認することができない。
「待たせてすまなかったのう。何か買ってくれるのかい?」
わざわざ店の奥から来てもらって、何も買わずに情報だけ貰うのは少し気が引けるなぁ。
安い物でも購入しようかとも頭を過ったが、まずは情報についてを聞いてから考えようか。
「実は知りたいことがありまして、ここ『遊蛍堂』を尋ねてきたんです。よろしければ、少しお話を伺ってもよろしいですか?」
「知りたいこと? 儂が知ってることであれば、全然構わんよ」
「ありがとうございます! 繁華街を抜けた先にある、大きな寺院の絵について知りたくてですね……。『遊蛍堂』の店主さんなら知っているだろうとのことで、お店を訪ねてきたんです」
「寺院の絵……。巫女と呪術師のお話じゃな。もちろん知っておるよ」
「本当ですか? 是非、お話を聞かせてくださいませんか?」
「もちろん構わんよ。客もおらんし暇じゃから、奥で話してやるわい。ちょっとついておいで」
「ありがとうございます!」
おお! どうやら詳しく知っているみたいだし、親切な人で良かった。
俺とディオンさんは店の奥へと戻るおじいさんの後をついていき、お話を伺うためお店の奥の一室へと案内された。
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