【ずー〜ーーーっと先】蟻の行列(仮)【順番無し】
書きかけ 加筆修正予定
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アンナが『教会』で働いていた幼少期、彼女に唯一与えられた「家族」は「おじさま」と呼ばれるその人だけだった。
可愛い盛りの歳のアンナに子供用の白いワンピースや素敵な麦藁帽子を与えてやることはあっても、「似合っているよ」などと褒めてあげたことは一度もない(アンナもアンナで、「おじさま」からそのような言葉をかけられるという期待はしていなかったが)。
そんな「おじさま」は、安息日になると決まって教会の庭の野菜の世話をするのが常だったのだが、手持ち無沙汰のアンナが仕方なくその様子を見学していても、内心退屈だった。
夏のある日、例の白いワンピースと帽子を身につけた彼女は、土っぽい匂いを感じながら畑の石垣に腰掛けて素足をぶらぶらとばたつかせていた。
すぐ下の石垣沿いの地面には、蟻たちがゾロゾロと行列を成している。
幼いながらも冷静な頭脳を持つアンナは、ガラス玉のような目を凝らして観察した。
蟻の個体の羅列。生きているはずの彼らが、記号のような無機質な粒の集まりに見えてくる……。
普通の子供なら、ここで残酷な好奇心を発動させて、裸足のまま蟻たちを踏み潰し始めてもおかしくはなかった。
ところが、アンナはそのような殺戮行為には興味を示さず、ただじっと視線を落としているだけだった。
「殺し」はもう、散々こなしている。
だからその代わりに、背を向けて作業している「おじさま」に向かって声をかけた。
「ねえ。おじさま。どうして人の顔はみんなちがうのに、アリは同じなの?」
「さあ。考えたこともないな」
「おじさま」は、それ以上は答えなかった。元々寡黙な上、ふとアンナが珍しく年相応の言動をしたと見て取ると、たちまち参ったように黙り込んでしまうのだった。
次の更新予定
灰燼の少年 櫻庭雪夏 @abfahren
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