第14話

 排他的で自堕落な生活。

 そんな時間を過ごし始めてから一年ほど経っただろうか?


「ふー」

 

 暗い夜の下。

 僕は玉座に座り、星を眺めていた。


「こんなところで何をしているの?」

 

 星空を眺め、黄昏ていた僕のもとにマキナがやってくる。

 彼女の姿は動きにくそうなひらひらの可愛い服に身をまとい、手にはお菓子が握られている。


「ここに誰かやってくるの?……聖剣まで携えて完全戦闘状態になっているけど……」


「ねぇ、マキナ」


「ん?」


「完全な王なんて居ないと思わない?」


「……?」

 

 唐突な僕の言葉。

 それに対してマキナは首をかしげる。


「マキナ……君はかつて。僕に誰もが幸せに生活出来る世界を守る魔王に、絶対の王になると告げ……僕はマキナに協力してきた……」


「え、えぇ……そうね?」

 

 僕が何を言いたいのか、いまだにマキナは理解出来ていないようで、困惑したような表情を浮かべている。


「……人は移ろい、変わっていく。誰もが変わっていくように、マキナも変わっていく。あぁ、もし。マキナが心変わりし、最悪の暴君となったら?信じていた人から裏切られ、誰も信じられなくなったら……?もし、そうなったら誰も止められない……」


「私はだってアルがいるもの!」

 

 自信満々に、笑顔で告げるマキナ。


「僕は死ぬよ?君と違って、寿命があるんだから」


 そんなマキナに対してそんな言葉を返した僕はゆっくりと立ち上がり、鞘から聖剣を抜く。


「あ、アル……?」

 

 僕に殺意を向けられたマキナは困惑しながら、足を一歩引く。


「ここで、殺すよ。マキナ。魔神たるマキナを殺せるのは、現在から未来に至るまで、おそらく僕だけだ」


 魔神と対の存在であり、聖神の力を一心に受けた勇者は僕の手のうちの中で死んだ。

 遥か過去何があったかは知らないが、ただの生きた屍として魔界に根を下ろしていた魔神にふれあい、その存在を吸ってしまったマキナを倒せる人なんて……聖神もまた精神が死に、動けない今。

 マキナに敵うのは僕と、勇者くらいだ。


「僕がマキナを殺す」

 

 僕は笑顔でマキナに殺害予告を告げた。

 

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