第2話

 マリスト神国の跡地に建てられた偉大なる魔王城。

 そこに存在している大きな広場に多くの民衆が集まり、喧噪を作り出していた。

 普段は何もないただの広場であるその場所にはいつ建てられたのだろうか。

 立派な処刑台が作られていた。


「さて、と……」

 

 広場を見下ろすことのできる魔王城の一角で僕はマキナと一緒に広場を見下ろしていた。

 処刑台には囚人の服を着させられた勇者が立っている。


「そろそろだね」

 

「えぇ、そうね。それにしても随分とエゲツない方法を……いや、随分と彼を警戒しているのね?パッと見た感じ私よりも遥かに弱いわよ?ここまで大掛かりにやる必要があるのかしら?」


「ある。僕は魔王に対抗するための存在である勇者という器をこれ以上ないまでに警戒しているんだよ」

 

 勇者。

 聖神の加護を受ける者。

 無限に強くなり、逆境を必ず乗り越えられる『ご都合主義』の体現者。

 裏ボスであり、本来不老不死の存在であるはずの邪神すら殺す勇者を警戒しない理由など存在しない。

 まぁ、マキナからしてみれば不可解なことだろうけど。


「でも、これなら確実に勇者を殺せる」

 

 勇者の『ご都合主義』はあくまで自身の屈強な精神によるものである。

 故に。

 仲間と分断され、ただ一人。

 自身が死ねば仲間が開放されるそんな条件を告げられ、生き地獄から抜け出せる大義名分を得た勇者が今更抵抗出来るはずもない。

 僕の発言がフラグにすらなりえないほどの完璧な状況を僕は作り出してみせた。



『これより!勇者の処刑を始める!』

 

 

 淡々と行われる勇者の処刑。

 僕も、魔王も、魔王軍の幹部すら出ていない勇者の処刑。

 人類の希望である勇者の処刑……そして、そんな出来事に関心を示さない魔王軍。

 それは人類の骨の髄までに敵わないと知らしめるのだった。


「さようなら。本当の主人公くん」

 

 僕は処刑人の手に掲げられている勇者の首を見て、隣にいるマキナにすら聞こえないような声でボソリとつぶやく。

 魔王軍による勇者討伐はあっさりと行われたのだった。

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