エピローグ

 怪物。

 本来ならば勝てない相手……勇者パーティー勢ぞろいしていたとしても勝つことなど不可能。

 怪物を弱体化させられる人造人間は倒れ、怪物は知性をもって戦うため更に圧倒的な強さを見せる。

 そもそも止めをさせるレクスが存在しないのである。

 どう考えても無理ゲーである。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 しかし。

 それでも容易に勝利出来てしまうのが勇者である。


「なん……だ、これは……ッ!」

 

 死ぬギリギリのところで覚醒した勇者。

 彼の力は怪物相手に無理やり勝利を収めたのだった。


「な、なんという化け物じゃ……急に強くなりすぎじゃろう」

 

 勇者の戦いぶりを見ていたリーゼが呆然と声を漏らす。

 

 

「さすがは勇者だ。我々の同胞を多数殺しただけのことはある」

 

 

 瓦礫だらけ、廃墟とかした街の中に響く男の声。


「……ッ!?」


「アルビノ……ッ!!!」

 

 勇者は唖然と口を開き、聖女が悪感情を暴発して牙を剥く。

 いつの間にか。

 勇者たちは多数のアルビノ


「抵抗は、出来まいな?」


「行くわよ!」

 

 意気揚々と戦おうとした聖女……それに対して勇者が震え、動かない。


「ちょっと……何をしているの?」

 

 怪訝そうな視線を勇者へと向ける聖女。


「俺は、戦え、ない……」

 

 勇者の手の平から落ちる剣。

 そして、そのまま彼はへたりこんでしまった。

 彼はすでに自身の罪と向き合った、向き合ってしまった。

 それなのにどうして再びアルビノに剣を振るえるだろうか。


「は?」


「ふっ。勇者があぁだとしても、私は抵抗させてもらうとするかのぅ……同胞相手でも容赦はしないのじゃ」

 

 リーゼが敵意をむき出しにして蒼の魔法を使おうとしたところで気づく。


「無駄ですよ。我らが主たるレクスはあなたのことを一番に警戒しておられた。魔法は使えませんよ」


「なっ……」


「出来るだけ手こずらせないでくださいね?」

 

 勇者と蒼の魔女の戦闘不能。

 それを前にして満身創痍のほかの人間が長き時を裏の世界で生きて鍛えていた多数のアルビノたちの魔の手から逃げることは不可能だった。

 

 

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