第38話
「は……?」
誰かの……いや、ここにいる僕以外の全員だったかもしれない。
意味が分からないと言ったような、呆然とした声が巨大な洞窟の中で小さくこだまする。
「よっと」
僕は自分が乗っていた怪物の首元から降りる。
そのタイミングで怪物の体が光となって消えていく……。
「ほいさ」
長い白い髪と赤い瞳を持った全裸の少女を抱きかかえた僕は地面に着地して体を大きく伸ばす。
「これでいいんでしょ?」
怪物の状態ではなく、こうして一人の人間の状態となれば製作者の一族であるミリーナさんが行動に制限をかけることが可能なのである。
「え、えぇ……そうだけど、え?え?」
ミリーナさんは僕の言葉にうなず居く……彼女は今、何が起きているのかよくわかっていない様子だった。
そして、それは
「そんなに不思議なこと?僕が得意としているのは他者を騙すこと。あんだけドンパチやっている中でこそこそ怪物の首元にまで登って、ちょちょいと再生を阻害するために発動していた力をちょっと捻じ曲げてこの子を取り出しやすくするための力に変えていたんだよ」
「あっ……ですから、私の術式がうまく働かなかったのですか」
「……最初から言ってくれていればよかったじゃろうに」
「敵を騙すには味方からって言うでしょ?二人が最初に戦っていた時、ミリーナさんが裏からだまし討ちしようとして失敗したんでしょ?だから、この怪物。見た目のくせして知能があるんじゃないかと思ってね。一人でこそこそ遊ばせてもらったよ」
「な、なるほど……」
「君は、想像以上にすごいんだね……」
「というか、早くこの子の行動制限をかけなくていいの?起きたらどうなるかわからなくない?」
「あぁ!そうだね!その子を寝かせて!今、行動制限をかけちゃうから」
「うん、わかった」
僕は持ってきていたシーツを取り出して地面に敷いてから彼女を優しく寝かしてあげる。
全裸のままだとあれなので、彼女に僕の服をかぶせて裸体を隠す。
「……よし!」
それを確認したミリーナさんは彼女の頭に手を当てて魔力を込め始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます