第37話

 巨大な洞窟を破壊せんばかりに振るわれる怪物の戟。

 それを矮小なる勇者が強力な力で打ち合い、戦いを演じて見せる。


「これが勇者と呼ばれる存在なのじゃな……」

 

 一人で怪物と戦いを演じているように見える勇者の驚異的な力にリーゼさんは汗を垂らしながらも蒼の炎を操りながら怪物の発動する魔法を炎ですべて食い尽くす。

 その傍らで人工生物が彼女にしかできない特殊な方法でデバフをかけて、ミリーナさんは自分で作ったいくつもの人工生物を活用してサポートを淡々とこなしている。

 

 それにしても……さすがは勇者というべきか。

 何度もリトライを繰り返し、敵の攻撃を完全に見切って、ミリーナさん、リーゼさんと人工生物を最大限にまで強化し尽して完璧に操作してようやく勝てるような怪物を相手にたった一人の人間の力だけで形勢を有利へと塗り替えてしまうのだから。

 やはり勇者はチートだ。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 勇者が叫び、体を捻じらせて剣を思いっきり怪物の手のひらをたたきつける。

 聖神の加護である聖なる力をその身に宿している勇者の手に握られている剣がまとっている光の力は強大であり、硬い怪物の体をたやすく切り裂く。

 斬られた怪物の手のひらか黒い煙があふれ……次の瞬間には再生してしまう。


「……クソッ!ダメだ!どんなにやっても再生しちまう!」


「まだだめなの!?」


「すみません。ミリーナ様……怪物の行動制限をかなりかけているのですが」


「根気強く戦う他あるまいて。気を抜かずに行けばまだ問題なく対処できる相手じゃ」

 

 どんなに斬りつけてもいくらでも再生してしまう相手など、対抗策が存在しない等しい。

 そんなやつを相手に戦うなど無謀にしか見えないだろう。

 現在、怪物の行動を制限できる権限を与えられている人工生物が怪物に干渉し、再生能力を封じようと奮起しているが、あまりうまくいっていない。


「いや、もうその必要はないよ」


 そんな中、一人怪物の首元にまで登っていた僕は小さな……しかし、なぜか洞窟中に響くような言葉を話す。


「もう終わったから」

 

 怪しい紫色の光に包まれた右手で人間らしき存在の頭を掴んだ僕はそのまま勢いよく引っ張って人間らしき存在を引きずり出した。

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