第35話

 人類最高戦力による現在の人間世界頂上決戦。

 今の僕の目の前で行われている戦闘を表現する的確な言葉である。


「ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 

 山の麓に存在する巨大な洞窟を震わせる怪物の咆哮。

 怪物の下半身を支配する数多の触手がしなる鞭のように蠢き、荒れ狂う。

 触手は容易く洞窟の壁を破壊するだけの威力を持っており、人間を殺すにはあまりにも十分すぎるほどだった。

 そんな触手が軽く百に届きうる量振るわれる……一国の兵力を持ってしても勝利は難しいだろう。


「……さほど速さはないな」


「気をつけるのじゃ。これの恐ろしさは触手などではないゆえにな」

 

 そんな怪物と戦っているのは勇者と蒼の魔女のコンビ。

 一人で世界に匹敵すると言われる勇者様と過去の世界において単独で世界を相手に戦った蒼の魔女のドリームマッチだ。

 

「『燃えつきろ』」

 

 蒼の炎を支配するリーゼさんは背に蒼の翼をはためかせ、蒼の炎で触手を焼き尽くす。


「シッ!」

 

 真に聖神の加護を受ける勇者は聖剣などなくとも絶大な力を発揮する。

 己の体を、手に握られている剣を、聖神の輝きでもって覆い、絶大な力を振るっている。

 二人の力は圧倒的であり、二人だけで十分なほど。

 そんな二人をミリーナさんと人工生物はせっせとサポートし、戦いに抜群の安定性をもたしている。

 

「ふわぁー」

 

 そんな中、僕はやることがなく、ひましていた。

 リーゼさんに言われたとおりに勇者たちを呼んできた僕のお仕事は驚くほどになかった。


「暇だなぁ……」


 正直に言って、聖剣ない僕など火力がなさすぎて使い物にならない。

 ちょっとだけ魔法の使い方がウザいクソ雑魚なのだ、僕は。

 一対一の戦いなら魔族の軍の雑兵にも負けるだろう。

 戦争における殺し合いなら勝てるけど……真正面からのぶつかり合いなど何も出来ずに敗北する。


「頑張れー」

 

 そんな僕に出来ること……もはや応援しかなかった。

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