幕門3

 魔界……マキナの故郷。

 そこに人間世界から僕とマキナはやってきていた。


「これからここで生活するのよ!」


 マキナが腕を広げ、堂々と胸を張って告げる。


「……」


 僕はそんなマキナにありえないものを見るような視線を向けながら辺りを見渡す。

 あるのは大自然。ここにあるのはただただ大自然。


「……家は?」


「ないわ!」


「……洞窟は?」


「ないわ!」


「……雨風凌げるもの?」


「ないわ!」


「……さ、最低限雨を凌げるものは?」


「ないわ!」


 僕の言葉にマキナは断言する。


「……」


 そんなマキナを前に僕は唖然とする。


「正気?」


 雨すら凌げない?この大自然で過ごす?あ、ありえない……本当にありえない。

 僕は見渡す。

 目に映るのは草木。どこまでも続く草木。そして遠くに見える山。

 耳をすませば……いや、済ませなくても聞こえてくる虫や動物の声。

 なるほど。ありえない。

 こんなん世界で一番平和ボケしていると言ってもいいかも知れない日本生まれ日本育ちの僕どころか、不遇すぎる扱いを受けて育った僕でさえノーサンキューだよ、多分。


「家、作れないの?」


「あぁ」


「ど、どう生活するの……?」


「え?動物を狩ってそのまま食べるんだよ?」


「生で?」


「うん、生で」


「無理に決まっているじゃん!?殺す気!?」


「む、無理なのか!?」


「当たり前じゃんか!」


 僕は驚愕と共に放たれるマキナの言葉に絶叫で持って返す。


「マキナはここで座ってて!僕が魔法でとりあえずの家を建てちゃうから!!!」


「え?あ、うん……」

 

 ここに来る前。

 僕はマキナから祝福を授かり、魔法が使えるようになった。

 ……まだまだ魔法には全然慣れていないけど……僕は四苦八苦しながら魔法を浸かって家の形をなんとか作っていく。

 ぐにゅ……ま、魔力の操作が難しい……。


「おぉーすごい!」


「……」


 最初に抱いていた出来る人……そんなイメージは崩れ去る。

 そして、全てを1人で整えたこの日以来。

 マキナは何をするにしても、自分で考えずに僕に聞いてくるようになった。

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