第7話

「ふぅー」

 

 僕は深々と息を吐きながら食料大臣より提出された書類を眺める。

 ……思ったよりも食糧不足がやばいな。僕の予想の1.5倍くらいやばかった。


「食料問題……どうなさるおつもりでしょうか?アル様のほうでも調達すると言っておられましたが……」

 

 僕が副官として任命した女の子、ミミリーが尋ねてくる。


「あぁ……人間と取引するんだよ。僕は人間だからね。魔族であるみんなと違って接触することもたやすい」

 

 それに対して僕は至極当然の答えを返す。

 ものがないなら買えばいいのである。

 だけど、魔族からは独特な魔力が漏れ出ているため、人間には魔族であると一瞬でバレてしまうのだ。

 人間世界において魔族は殺すべき、憎悪すべき対象。

 だからこそ、人間との取引は人間である僕がやらなくてはならない。


「でも、僕ってば悪魔の子なんだよなぁ……」

 

 僕が大々的に商売できない理由。

 それは僕が悪魔の子だからである。その差別は異常なまでに根太く、ユダヤ人、黒人差別よりもひどいものがある。

 本当に人間相手されていなくて、働くことも商売することもできない。奴隷として使ってくれることさえない。

 死ぬ寸前にまで痛めつけられ、金はなく、ほとんどが餓死で死に絶えていく。

 

 そんな悪魔の子である僕が一人の人間として商売するには髪も目も隠し、正体を完全に隠しての商売しかできない。

 そんなやり方だと裏での取引しかできず、たくさんの買取は不可能だろう。残念なことに。


「あぁ……どうしようかなぁ」

 

 僕は『戦争』という単純明快にしてわかりやすい解決策を頭に浮かべながら、頭を抱えて見せた。

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