第51話

「さて、と……僕が眠っている間に何が起きた?」

 

 ダメージが完全に抜け、問題なく活動できるようになった僕は口を開き、マキナへと尋ねる。


「えっとね……まず、魔王になるのが私ということに決定したよ」


「え?もう?」


「もうって言うか……マキナはもう一週間くらい眠っていたんだよ?公爵家当主が私だけになった以上、そうなるのは当然の帰結だと思うんだけど……」


「えっ!?僕ってば一週間も眠っていたの!?嘘でしょ!?」

 

 一週間僕が眠っていた。

 その事実に僕は驚愕する。


「本当だよ。一週間も眠っていたんだよ……心配するに決まっているじゃん……ッ!」

 

「ご、ごめん……」


 そんなに長いことを眠っていたの?ふ、普通に驚愕なんだけど……。


「それで?マキナが魔王に決まってどうなったの?」


「どうもしないわ。魔界に存在する全ての貴族家に新たなる魔王が私になったと伝えられたこととずっと誰も立ち入ることの許されなかった魔王城に私の立ち入りが許可されたくらいよ」


「……ッ」

 

 ぼーっとしていたせいで気づかなかったが、今僕の居る部屋は僕の見たことがない部屋だった。


「今も、魔王城に居る?」


「……ッ!そうよ!アルにずっと見てほしかったものがあるの!立てる?」


「え?あ、うん。立てるよ」

 

 僕はマキナの言葉に頷き、ゆっくりと立ち上がる。


「こっちよ」

 

 僕はマキナに連れられて、この部屋にあるテラスへと向かう。


「おぉー」

 

 テラスに出た僕は外の光景を見て感嘆の声を漏らす。

 そこに広がっていたのは魔界。


「すごいでしょ?ここは魔王城の最上階。ここなら魔界のほとんどを見渡せるの」


 雄大な自然の景色。

 東京スカイツリーから見下ろす東京の人工的な街とは違い、どこまでも続く雄大な自然の世界とそこに共存する屈強なる魔族たちの街。

 

「私は……魔王になれたんだね。ずっと目指していた魔王に。私は」


「ふふふ」 


 僕はキラキラとした目でここから見える魔界の景色を見つめるマキナを見て笑みを漏らした。

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