麗奈の話③

「じゃあ、そうしようか」


駅から、少し離れた場所に歩いて行く。


ラブホテルの中に、どんどん歩いて行く。


少し怖くなった。


でも、別に処女だったわけじゃない。


だから、一度だけでも和利君とそうなったって…。


やっぱり、付き合えなかったら嫌だ…。


頭の中は、ずっとそれがグルグル回っていた。


ラブホテルの部屋に入った。


鞄を置いた。


私は、ラブホテルという場所に来るのが初めてだった。


今まで、付き合った人とは基本的に家だったから…。


「初めてくる」


「ラブホテル?」


「うん、そう」


「そっかー。何か、嬉しい」


どういう意味なんだろう?


「嬉しいの?」


「何か、嬉しい」


隣同士に、並んでベッドに横になる。


肩が、ぶつかり合う。


焦れったくて、くすぐったくて、ずっとこのままでもいいと思ってたのに…。


和利君は、私の足の間に手をいれてくる。


「付き合わない人とは、そういうのは…。」


「体の相性から、始まる恋もあるんだよ!俺は、エッチしてから決める派なんだよ」


「そうなの」


「麗奈ちゃんは、子供だからわかんないかな」


「それなら、それでいいよ」


「じゃあ、しようか」


大人の恋愛が、これだと言われたら信じるしかなかった。


この時の私は、二人しかお付き合いした事がなかったから…。


「麗奈ちゃん、触って」


だけど、私は和利君のそれには触れられなかった。


「嫌なの?」


「ごめんなさい」


だって、好きな人としてるのにこんなに空しいんだもん。


それを触った事がないわけじゃなかった。


ただ、空しくて悲しかったから触れなかった。


和利君は、キスをしてくれなかった。


今まで、付き合った人はキスをしてくれたのに…。


でも、優しかったよ。


それに、ちゃんと避妊もしてくれた。


ゆっくりと和利君が入ってきた。


気持ちいいとか悪いとかわからなかった。


経験が、少なすぎたからだと思う。


「見て、麗奈ちゃん。映ってる」


鏡張りだって事に、初めて気づいた。


「麗奈ちゃん、エロいね」


「うん」


何だろう?


見つめてると悲しくなってくる。


こう出来たら、誰でもよかったの?


和利君にとって、私はお人形さん?


「声だしていいんだよ」


口を押さえてる私に、和利君はそう言った。


「もっと、気持ちいい顔見せて」


「うん」


頷いて、声が出た。


「最後は、バックが好きなんだ」


そう言われて、後ろからされて…。


和利君は、果てた。


私は、何だろう?


空っぽみたいになった気がした。


振れば、カラカラって音がしそうな気がした。


「和利君、麗奈と付き合ってくれるの?」


和利君は、私をチラリと見つめて引き寄せた。

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