立ちんぼ女子をやってみた俺、立ちんぼ女子と仲良くなる

第5話 邂逅

 立ちんぼ女子、というのを聞いたことがあるだろうか。目立たない路地に立ち、金銭目的のために身売りをする女子の一群を指す言葉だ。夜な夜な、変な男たちが隠語を囁き、淫乱に走る。


「て、メディアはそう言ってるけど本当にそんな人いるのか?」


 と思った俺は自分で確かめに行くことにした。というか、女子がそこにいるなら女子と仲良くなればいいじゃないか! なれるかどうかは知らないが。


 翌日の夜10時。俺は東京にある暗い路地にいた。大学が夏休みということもあって、俺に迷いはなかった。


「あの……」

「何?」

「えっと、」

「いくら?」


 忘れていたことがある。俺は中学のころから、女子と話した記憶が無い。男子友達とゲームやサッカーにハマって、そしてそいつらも県外に散って、今は俺たった一人。


「ねえ」

「ごめんなさい!」


 俺は逃げるように、その場を立ち去った。


 ===


 その翌日。俺はめげることなく昨日と同じ路地に立った。横にいるのは昨日の女子とは違う。確か、昨日のは髪の毛が短かった気がするが、今日のは長い。


「何?」

「いや、えっと」

「……」


 無視された。まあ、無視されておかしくない状況だしな。うん。


「?」


 それは、特に理由もないことだった。ただなんとなく、俺は右を向きたくなっただけだった。ただなぜか、そうしなければならないような気がした。


「あ、どうも。へへ」

「……」


 黒髪ロングの女子。大学生か? 服装は、男の気を引く派手なものではなく、スーツ姿だ。塾でバイトしてるのか、あるいは就活か。それにしても立ちんぼでスーツ姿ってのはなぁ。


「あ、あのすみません」

「!」


 その人からしゃべりかけてくるとは思わなかった。


「変に思ったら別にいいんです。でも、私、逃げて来たんです。親から」


 出会い早々に重苦しいことを投げかけてきた。


「私とホテル行ってくれませんか?」


 出会い早々、タダで交渉してきた。


「お願いします!」


 出会い早々、……


 俺は、果たして本当にここに来てよかったのだろうか。。。。

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