第58話 知恵の次は……

 では、後始末をしよう。


 まずは窓口担当者をサンクトに調べてもらおうか。


 こいつの奉納部位は外皮らしい。


 中にピンクの綿が入っていて、買い取ってもらえるそうだ。


 こいつらも動くぬいぐるみだったのか。


 解体して、アイテムボックスの中に入れてもらった。



 さて、肝心のスローライフ許可証は入手方法はどこにあるのだろうか?


 とりあえず、担当者たちがいた部屋を調べてみよう。


 ここは机と椅子の置いてあるだけの、ただの休憩部屋みたいだな。


 目ぼしいものは何もなかった。


 では、他の場所を調べてみようか。



 下り階段を発見した。


 いつものレッドカーペットの敷かれた豪華なデザインのヤツだ。


 では、先に進むか。



 地下一階にやって来た。


 周囲は洞窟、前方にはボス部屋、他は上り階段しかない。


 またこういう構成の場所か。


 ここのボスを倒して終わりなのか。

 それともまたボスとの連戦になるのか。


 どちらなんだろうな?


 まあ、倒せば分かることか。


 では、まずはボス部屋を覗いてみよう。


 俺はボス部屋の扉を開けた。



 うわっ!?

 な、なんだと!?


 胴体部に赤色の文字で『す~ぱ~け~びいん』と縦書きされている金色の全身タイツ。

 黒い目出し帽。

 青いアフロヘアーのカツラ。

 ピンク色の腹巻。


 これらを身に着けている。


 両手に長さ七〇センチくらいの、黒い警棒のようなものを一本ずつ持っている。


 身長二メートルくらい。

 筋骨隆々の男性体型。


 このような姿をした不審者が、扉のすぐ近くに立っていた。


 びっくりしたなぁ、なんでそこにいるんだよっ!?


 ボスは部屋の中央にいるもんじゃないのか!?


「ようこそ、スローライフを望む愚か者どもスパケビケビ!」


 す~ぱ~け~びいんが話しかけてきた。


 愚か者!?

 言ってくれるじゃないか!!


「貴様らに試練を与えようスパケビケビ!」


「試練だと!? それはなんだ!?」


「題して『スローライフ力の試練』だスパケビケビ!」


 知恵の次は力かよっ!?


「私にはスローライフオーラ魔法しか効かないスパケビケビ! そして、私には『スローライフオーラ魔法の威力を軽減しちゃう魔法』がかかっているスパケビケビ!」


「なんだそりゃぁっ!?」


「名前通りの魔法だスパケビケビ! 生半可なスローライフオーラでは、この私は倒せないと思えスパケビケビ!」


 なるほど、だから力の試練というわけなのか。


「さあ、貴様らの力を見せてみろスパケビケビ! 自信がないならスローライフなんて諦めて帰ることだなスパケビケビ!!」


 す~ぱ~け~びいんがそう言って、部屋の中央まで後退して行った。



「あんなことを言っていたが、本当なのだろうか?」


「怪しいもんじゃな。またウソだと思った方が良いじゃろう」


「そうだな。スローライフオーラ魔法がまったく効かなかった、なんてことになりそうだよな」


「うむ、他のもので攻撃した方が良いじゃろう」


「では、シチロー頼んだぞ!!」


「なんでそうなるんじゃ!?」


「スローライフオーラ魔法以外の攻撃方法がないからだな。ファーストライフオーラ魔法はオーラがたまってなくて、使えないみたいだしな」


「人使いが荒いのう……」


「文句を言うなって! 頼むぞ!! シャワイヤーもスローライフオーラ魔法は使わずに戦ってくれよ!」


「分かったゲスッス! ホースでぶん殴ってやるゲスッス!!」


「よし、では、行こうか!」


 俺たちはボス部屋に入った。



 中はいつも通り、だだっ広い洞窟の一室なんだな。


 そして、いつもの通りす~ぱ~け~びいんが二体になったぞ。


「入って来るとは良い度胸だスパケビケビ! そこだけは褒めてやろうスパケビケビ!」


「それはどうも」


「では、ゆくぞスパケビケビ! 貴様らのスローライフオーラ魔法を見せてみろスパケビケビ!」


 す~ぱ~け~びいんたちが向かって来た。



「よし、行くんだ、シチロー!」


「仕方ないのう……」


 シチローが向かって行った。


 そして、巨大化してす~ぱ~け~びいんの首のあたりに体当たりをした。


 す~ぱ~け~びいんはあお向けに倒れ、動かなくなった。


 もう一体はシャワイヤーが、ホースで殴ったら動かなくなった。


 スローライフオーラ魔法を使わなくても倒せるじゃないか!?


 やはりウソだったのかよっ!?


 ここって、こんなのばかりなのか!?



「ちょっと、ちょっと、ダメでしょスパケビケビ!」


 えっ!?

 す~ぱ~け~びいんがまた出て来たぞ!?


 どういうことだ!?


「ダメって、何がだよ?」


「君たちスローライフオーラ魔法で戦ってないでしょスパケビケビ!? それはルール違反だよスパケビケビ!」


「なんだそれは!? そんなルール聞いてないぞ!?」


「いやいや、言ったでしょスパケビケビ!」


「言ってないって! スローライフオーラ魔法しか効かないとしか言ってないだろ!!」


「だから、それがスローライフオーラ魔法しか使っちゃいけないってことでしょスパケビケビ!? そこは察してよスパケビケビ! 君たちコミュ障なのスパケビケビ!?」


「えええええっ!? な、なんじゃそりゃぁっ!? そんなの知るかよっ!?」


「はぁっ、君たちはダメダメだなぁスパケビケビ!」


 す~ぱ~け~びいんにあきれられたようだ。


 なんでそんなことを言われなければいけないんだよっ!?


 俺たちは悪くないだろっ!?


「あ~あ、君たちのせいで気が乗らないやスパケビケビ! 今日はもう閉店にするから帰ってくれるスパケビケビ? 挑戦するなら明日以降に来てねスパケビケビ」


「ええっ!?」


 俺たちはボス部屋を追い出された。

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