第925話 絶体絶命からの絶体絶命と漢気ヲルガン!
デストロイは、人間の生命力を媒介にした何かに影響を受けて片膝を突き立ち上がれずにいた。
「そうでした。お伝えするを忘れていましたが、あの檻にいたのは、ごく一部の人間に過ぎません。そして、その大量の人間は、貴方を弱体化させるために生命のほとんどを酷使した。そう!貴方が、大量の人間を殺したのと同義なのです。現実とは残酷だ」
ローブの男は、初めからデストロイを精神的に追い込む計画を立てていた。
「俺を弱体化させるために、随分と用意周到で頑張ったじゃねぇか。おもしれぇ!久々にダメージと見下される感覚を味わったな。それより、知らねぇ人間に興味がねぇし、大量に死んだからって何も思わねぇよ」
「私は、傲慢な人間と自信に満ち溢れた人間の歪む顔を見るのが大好物なのです。そして、本物の強者の歪む顔と私に助けを乞う姿を見るは、もっと大好物なのです。貴方は、私の理想そのものだ!それに、貴方は人間を愛しているにも関わらず気付いていないようですし」
ローブの男は、デストロイを見下す様子もなく、ただ単純に性癖に刺さったような喜びの声を上げながら、デストロイを大好物だと言い、内心を見透かしたような言葉を投げかけた。
「本当に気持ちのわりぃ野郎だな。変態以上の何かを感じてしまうな。それに、俺が人間を愛してる?冗談は休み休み言いやがれ!おい!俺を早く殺したいなら仕掛けてきやがれ」
デストロイは、ローブの男を心底嫌そうな顔で見つめる。
「フフフフフ、私は貴方に恋をしているのかもしれません。もっと貴方の意外な一面を見せて頂きたい。それから、私は騙されませんよ。仕掛けて欲しそうにしているのが見え見えです。ん〜ですが、貴方の策略に乗ってあげましょうか」
ローブの男は、口では愛だの恋だのと言っているのだが、顔は無表情であり、異質感を出している。そして、デストロイの罠と分かっているが、20体のレイスを出してデストロイを襲わせた。
「少ねぇな!俺も舐められたもんだぜ!お、おい!何やってやがるんだ」
デストロイが、レイスに襲われる瞬間、大盾を構えたヲルガンが目の前に立ちはだかってレイスの行く手を阻んだ。
思いもよらない相手が目の前に現れたので、デストロイは驚きの声を上げた。
「デス兄貴がピンチの時に駆け付けなくてどうするんです!この身が滅んでもお守りします」
ヲルガンは、襲いかかるレイスを跳ね除けたあと、大盾で殴り飛ばして消滅させていく。
「チッ、バカな野郎だ!俺一人でどうにかなるってのによ!ヲルガン、早くどけ!その盾に地獄の力はもうねぇ」
「デス兄貴、申し訳ないですが、少し黙っていてください!絶対に動きません」
先程まで、消滅していたレイスだったが、ヲルガンの大盾の打撃を食らってもなかなか消滅しなかった。そして、しまいにはすり抜けるように空振りをして、いつの間にヲルガンとデストロイは囲まれてしまう。
「申し訳ございません......俺が、不甲斐ないばかりにデス兄貴を救うどころか、足手まといに......」
「ヲルガンは、大人しくしていろ!破壊以外で、この力を使う羽目になるとはな。あまり得意じゃねぇが、解放するしかねぇな」
弱体化と何故か地獄の力と破壊を使うことの出来ないデストロイは、手をかざして金色の光を放出させて辺り全体を神力で満たした。
ヲルガンを取り囲んでいたレイスは勿論のこと、この空間にいたレイス全てが跡形もなく消え失せたのだ。
「出し惜しみなく使ったが、慣れねぇことはするもんじゃねぇな。見事に仕留め損ねたな」
「ふぅ、危ない危ない。驚きました。まさか、まだそのような奥の手を隠しているとは......長年に渡り貯めに貯めた生命力を全て使い果たしましたよ。フフフフフ、それにしても何かあるとは思いましたが、予想外でした」
ローブに埃など付いていないのだが、ローブの男はわざと手で払ってやれやれといった表情をする。そして、破壊の消耗と慣れない神力ということで無駄な放出をしたとはいえ、膨大な神力を食らってもローブの男は平然としていた。
「はぁ、神力の訓練をするべきだったな。そろそろ立ち上がれそうだ」
デストロイは、神力が底を突き、地獄の力と破壊も使えない絶体絶命な状況にも関わらず、清々しい顔をしながら立ち上がるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます