第120話 目覚めたアレクに待ち受けていたのは...!
「お母...さん...」
泣いてベッドに顔を伏しているカリーネにはその声は届かない。
「奥様!!アレク様が目を覚まされました」
普段なら無礼である為、絶対しない行動ではあるが、慌てたネリーはカリーネの肩を揺すって知らせる。
「え!?アレクちゃんが!」
「お母さ...ん、おはようござ...います。喉がカラカラでうまく話せま...せん」
それを聞いたカリーネは、感情が一気に溢れてドバドバと凄い勢いで涙が溢れ出す。
「お母さん?」
「あ、アレグぢゃぁぁぁん。よがっだわ」
嬉しさのあまりギュっとアレクを抱き締める。
「お母さん苦じいぃぃ」
「あ!ごめんなさい...あまりに嬉しかったものだから。それより痛いところはない?気分は悪くない?それからえっと...「お母さん、大丈夫だよ。喉が乾いたくらいだから」ネリー、早く水を持ってきてちょうだい」
慌てるカリーネに、苦笑いを浮かべながら大丈夫だと話す。
「奥様、お水は用意してあります。アレク様、どうぞ」
ネリーから水を受け取って、一気に飲み干すアレク。ネリーは、何も言わずにもう一杯注ぐ。アレクは、入れてもらった水をもう一度勢いよく飲んでカラカラだった喉を潤す。
「ネリーさん、ありがとう。それからお母さん、心配かけてごめん」
「ほんとそうよ。2年間も目を覚まさなかったのよ。もう2度と目を覚まさないんじゃないかと思ったわよ」
「えぇぇぇ2年!?」
アレクは、神様から一切そんなことを聞かされていなかったので、2年と聞いて驚きの色を隠せないでいる。
「2年よ!本当に心配したわ。もう無茶はしないと約束しなさい...私にとってアレクは大事な息子なんだから」
本当に心配してくれたのだということが、表情や言葉からもわかり申し訳ない気持ちになるアレク。
「ごめんなさい...もう無茶はしません。それで、あの〜お母さんのお腹が大きいのって...まさか!」
「そうなのよ。アレクの弟か妹よ。もうすぐ産まれてくるわ」
「お母さん、おめでとうございます!!弟かな?妹かな?どっちにしてもかわいいんだろうなぁぁ」
そんなことを思っていると、ネリーが知らせに行ってくれたみたいでドアが急に開く。
「おぉ〜アレク〜よかったんじゃ。心配したんじゃぞ」
「アレク様、目を覚まされて本当よがっだです」
ヨゼフとナタリーは、半分泣きながらアレクが目を覚ましたことを喜んでいる。
「やっと目を覚ましやがったか。寝てる間にみんな...ってアレク坊、どこかで修行でもしてきたのか?」
ノックスは、アレクの強さを一発で見抜く。それに対して、アレクは心配よりもそこを指摘してくるのが師匠らしいなと思うのだった。
「師匠、後でお話「アレク様、ご無事で何よりです。私とマンテ爺がもっと早く攻撃していればこんな目に...申し訳ございません」アハハ!2人の所為じゃないから。俺が油断したのがいけなかったんだ。2度と油断はしないよ」
「アレク!もう無茶はしないと約束したわよね?また戦う気?」
パスクが、急に目の前で土下座をしてきたので、素直に返答をしたらカリーネの逆鱗に触れたようで怒られるアレク。
「え!?当分は戦い「当分?もう戦いは許しません」え?えぇぇぇ〜そんなぁぁぁ」
カリーネから戦闘禁止令が出て、アレクはガックリと肩を落とすのであった。それを見ていたみんなは大笑いする。その光景が面白かったのもあるのだが、アレクが本当に元気になったんだなと感じて自然と笑いが出たのだ。
アレクが目覚めてから2日が経った。
アレクは、カリーネからまだ外出許可がおりていないので、部屋の中で出来ることをするしかない状況であった。
「大分体が動くようになったけど、まだまだ駄目だなぁ。それよりも、2年動かないと、ここまで筋肉が落ちてしまうなんて...」
2年動かなかったので筋肉は落ちて痩せ細り、体は固まって動かない状況になっていたのだ。筋肉超緩和薬を飲んでストレッチをすることで、ある程度動けるようにはなったのだが、いつになったら向こうで修行した時のように動けるのか分からない状況だ。
「アレク様、入りますね。ってまたそんな無茶をして」
ナタリーが、朝食を持って来てくれたようだが、筋トレをしているところを見られてしまったのだ。
「仕方ないだろう。こうやって動かさないと日常生活すらできないんだから。それに、面倒くさいけど学校にも行かないと...来年入学でよかったのに陛下が無理矢理ねじ込むとかいらないお節介だよ」
「ゔっ!それを言われたら容認しないといけなくなりますからズルいです。それにしても、何故入学をそんな時期にねじ込むようなことをしたのでしょうか?」
「そこまでは分からないな。でも半年で遅れを取り戻さないといけないから大変だよ。明日からセバスが教えてくれるらしいけどね」
何故ねじ込むようなことをしたのかはわからないが、陛下には何か思惑があるようだ。
そして、明日から待ち受けるセバスによる地獄の勉強合宿が始まることを、この時はまだ知らないアレクであった。
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