第342話 買い物は楽しい
春の期の閑散具合からは考えられない人の多さにあらためて息を吐くネア・マーカス、ティクサー在住五年目です。
大きな通りにはいろんな露店が出ていて目移りします。ところどころで治安維持要員らしい冒険者ギルドのお兄さんたちや警備隊の人たちが言葉を交わしあっているのがうかがえます。
実際、今日もお掃除や落し物拾いの依頼がギルドの依頼ボードに張り出されているはずです。迷子保護や道案内補助もありましたよ。
私達は遊び回るのが今日のオツトメですよ!
「あ、干し果物屋さんだ」
「ネア、まず投票チケットと交換できるお店から見てまわりましょ。食べ物は美味しく食べれなきゃ残念だしね」
干し果物屋さんを見つけた私をティカちゃんが引っ張って歩き出しますよ。
チケットと交換できる露店は指定の広場なのです。
「私、古着屋にも寄っておきたいの。だって学都で買うの高そうでしょ」
ティカちゃんの言葉にハッとします。
そうでした。各期に合わせた装いは大事です。その上、私達は成長期ですよね?
お洋服って自作出来ましたっけ?
いえ、お裁縫は苦手なんですよ。ええ。
「学都でも購入に困らないぐらいに迷宮で狩らないと?」
「ネアはできるでしょ。私だって生活と学費には困らないかもしれないけど、何があるかわからないし、ひとつ大きめの期節の服としっかりした荷物袋は確保しておかないとね。物価が高いことはわかっているんだから」
確かに私の荷物袋は迷宮と繋がっている無限資材取り放題の狡っこ荷物袋ですからね。
露店は確かに食べ物系が多いですが、工芸系も少なくはないのです。食器や家具衣類や装飾品に武器防具。もちろん、魔法薬の類だって売ってます。警備隊や冒険者の人達が自分の推し工房を盛り上げるためにチケットを購入して買いに行くと息巻いてましたから知ってますよ。オッさん曰く、チケット購入の武具はかなりお得に準備しているそうです。
私達には不必要な系列ですけどね。
羊草で綿が採れてもその後の工程はかなり多く人手と技術が必要で安定供給にはやっぱり人が不足なんですよね。ひとりふたりでは当然焼石に水。だからと言って教えていける人材も不足。
住人になるつもりで来た、もしくは帰ってきた人たちの中
から経験者を雇用したいと『面接受付ます』という看板をぶら下げる露店も少なくないようでした。
天水ちゃんが『裏ギルド』できそうだなんて情報も教えてくれましたよ。
いろいろありますよね。
「ネア。……ネア!」
耳元でティカちゃんに呼ばれましたよ!?
「もう、ぼーっとしてないの! 聞いてるのよ。朝食事はしたの?」
「ちょうしょく? うん。食べたよ?」
「じゃあ、食品じゃなく雑貨や古着から見ていいかしら?」
「うん! かわいい服あるといいね」
見るだけなら新しい服もいいんじゃないかな?
「そうね。冬用の厚手と春夏のちょっときれいめ、あと大人用の外套が手に入るといいんだけどね」
大人用?
ずるずるでかわいいから?
「……。ネア、大人用の外套があれば最悪野営時の防寒に使えるし、着れるし、刻めば非常時の治療布にも使えるの。下宿に板寝台しかない時の対応にもね」
板寝台!!
「藁布団があっても掛かってる布がないこともあるし、『清浄』とか『浄化』があれば問題は減らせれるけど、快適な方がいいでしょ」
チケットじゃ足りなさそうですね。
でも必要物資なのはよくわかりました。
深く頷く納得ですよ。
「ハーブくんは私のお古……無理ですね。おかしいです。ハーブくんななさいですよね。なんで視線の位置がほとんど変わんないんですかっ!」
ひーどーいー。
みっつ。みっつも違うはずなんですよー!
「ネア、行くわよ。態度までイモウトにふさわしくありたいんなら駄々捏ねていればいいと思うわよ?」
うううー。
「ネアは、お姉さんですよ」
「そうね。それで?」
「お買い物、行きます」
ティカちゃんにいいようにあしらわれている気がしますが、間違ってないのでいいですとも。
チケットで寝具一揃いを三人で確保しました。冬の期に備えて多くの人に回したいと言ってらっしゃる露店主さんは今後商売が上手くいくといいなと思いました。
チケット購入も現金購入もあわせてティカちゃんの望んでいたものはお得に入手できたので最後の一枚は食べ物に使いますよ!
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