第341話 秋祭りの準備会

『蒼鱗樹海』への侵攻を依頼されたトカゲ氏は『タイミングをみて』と応え、その件に関しては迷宮同士で話しあうらしく管理者の私は蚊帳の外ですよ。

 弟君とトカゲ氏の契約の形式の問題で相互干渉力が弟君にダメージがいく可能性をトカゲ氏は危惧しているらしいです。やっぱり弟君って基本厄案件じゃないかなと疑問視しているネア・マーカスです。

 今日はいくつかある広場で人気投票を兼ねた露店祭が行われます。孤児院の子供達や十二歳までの子供達にも数枚のチケットが配られ好きに商品と引き換えが可能になっています。(大人は運営本部で購入ですよ)

 四枚のチケットをどの店で使うか。チケットを多く集めた店が本番で表彰されたり、褒賞を貰ったりするのだ。

 そしてお客さんも増えるんだろうなって思う。

 どこの広場で買い物をするかも課題になるんだと思う。美味しい物の露店はどこが多いんだろう?

 人出が多そうなのでマオちゃんはマコモお母さんとご一緒で、私はティカちゃんと弟君と共に行動するなら保護者なし許可でしたよ。ティカちゃんが家族の人と過ごすなら邪魔はダメだと思いますけどね。弟君は必須だそうです。

「物販には物量がいるから、既に本命は決まってるんだろうな」

 うちの近所の広場に向かいながら弟君のそんな言葉を聞きます。

 まだろくにはじまってもいないのに結果が出てるような言葉はどうかと思いますよ?

「まだ決まってないでしょ?」

「んー、本番で選ばれる候補は決まってると思うよ? 番狂せには商品にする素材を確保しなきゃいけないし、物によっては加工時間だって必要だしね。食品販売ならたまちゃんチからどんだけ加工食材買い占めることが出来るかっていうことが決め手になるだろうしね。予算と伝手がどうしても必要になるんだ。細工系の技術職種も一緒だね。一般選考は数が決め手だよ」

 えー。

 そういうものー?

「だって、にぎやかに盛り上げるのが主体で、この選考別に公平さを目指してはいないよ? あ、姉さんが推したい店に素材を融通したら思わぬ本命候補ができると思うけど、オススメはしないよ?」

「オススメしないの?」

「だって、姉さんという仕入れ先がある有利は確かにそうだけど、姉さん、安定した仕入れ業者じゃないから」

 オススメしないと言われて疑問を問えば、さらりと答えてくれたけどね。それは、うん。しかたないかな。と思うんです。確かに私は春には学都に学びにいくつもりなんですから。

「あ。姉さんがいきなり腸詰屋台開いて参加します。なんてしたら本番も含めてお祭り楽しめないと思うからそっちもオススメしないよ? 絶対屋台からはなれられなくなるからね」

 えー。

 銀貨売りの腸詰め屋台がそんなに売れますかねぇ?

「お祭りできる余裕がある町で秋祭りして優秀者は王都で歳越祭の振舞いに参加出来るらしいね」

 ひとつ歳を重ねる特別な日で、基本はそれぞれの自宅や教会で迷宮に感謝の祈りを捧げる日。らしい。王家の人や教会ではいろいろシキタリにそった催事があると弟王子がクドクドと説明していたのを聞いた程度には知った。

 王都では教会と王家主催で優秀な冒険者や商人、各ギルドの功績者にいろいろな恩賞的な振る舞いがあったそうだ。迷宮が健在だった頃は。

 迷宮がふたたび国内にある訳だから再開は当然だそうです。

 領主様がにこにこと「蒼鱗樹海の二階層は楽しいなぁ! 兄者には負けてられん」とかおっしゃってました。兄者様はクノシーの領主様だそうですよ。

 まぁ、副官夫人様に「仕事なさってくださいね」と笑っていない目で微笑まれてました。笑って「もちろんだ! もう一息迷宮潜ってくるわ!」とおっしゃってましたが。

 なんていうか、弟王子様が兄王子様の言葉を聞き流すスタイルはアドレンス王族の特性なんでしょうかねと思っちゃいますね。

「歳越祭は家族で過ごすので屋台なんてやりませんよ」

「そう。よかった。もしやっちゃったらティカちゃんの時間も拘束することになるしね」

 本気で安心した表情で弟君がにっこりですよ。

「ティカちゃんのとこのお店も露店には参加せずにいつも通りお店するらしいもんね」

 お祭り時期で揚げパン、というか刻んだ腸詰めを混ぜた揚げパンを普段より安価で販売するそうです。

 腸詰めと小麦粉と食用油とチーズは納入しましたよ。

 引き換え券を貰ったので速攻で揚げパンと引き換えました。腸詰め揚げパンもチーズ揚げパンも美味しいままに保管してますよ。

 あと、林檎水と蜜柑水もガラスボトルに入れてもらいました。ほんのりと果汁が美味しいんですよね。

「姉さんの欲しいに付き合うなら露店参加するよりいつも通りがいいよね」

「一日は家族で露店巡りするそうですよ」

「お姉さん、お仕事あけれるの?」

 冒険者ギルド、忙しいですからどうなんでしょうね?

「新人教育は進んでいるそうですよ?」

「ネア! ハーブ、こっちよ!」

「あ、ティカちゃん!」

 待ち合わせしているわけではないんですがあたり前のように合流です。

 お祭りの準備会楽しむぞ!

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