第257話 森に道をつくります①
「さて第二班も来たことですし、道の先を拓きましょうか」
にこやかに手招きする警備隊長さんに寄っていくネア・マーカス作業員です。
なぜかドンさんも手招きされて寄って来ましたよ。
道を拓く範囲やどのくらいの距離がいいのかを警備隊長さんがドンさんに聞いています。適正範囲大事ですね。
「ではネアくん」
警備隊長さんがもう一人、呼び寄せたのは森番のおじさん(顔見知り)です。
「彼について行ってそのポイントからドンくんに向けて道を拓く伐採をしてもらえるかな? 護衛は……ヘインツ! ついていきなさい」
「ハッ!」
こないだ弟くんを肩車していたお兄さん隊員ですね。(おそらく班長さんの一人)
弟くんとティカちゃんは一緒に行動だそうです。やったね。
「ハーブ、私たちは伐採してない方で採取してましょ」
あ、私も参加したい。
「そうですね」
弟くんは基本狡いと思います。鑑定使えるから薬草いっぱい拾えるんですよね。羨ましいです。
「道幅は荷馬車が三台すれ違えるくらいあればしばらく持つと思うんだがね。上手にできるのかね。ネア坊に。うっかりで地面削り過ぎたりはほめれん案件なんじゃが」
うっ!
心当たりがっ! ドンさんから聞いてるとしか思えませんです。情報収集大事なんですね。
「ネア坊……」
え。聞いてなくて普段の私から想定されたってマジですか?
では、ではですね。
「繊細な集中で頑張りましょう!」
「いや、気張り過ぎん程度でええぞ?」
くぅ!
期待されてないっ!
「んで、どのくらいの……いや、まずはここで。魔物がわいた時護衛はこっちのあんちゃんだけだからのぉ」
「まさかの自分の戦力が不安案件!」
おじさんの言葉にショックをうけて見せる警備隊班長さんそのいち。
この距離ならたぶん、ドンさんならすぐ駆けつけてくれますね。なにせ声の届く距離です。
「猪や兎、虫系じゃないの?」
町の周辺で出てくる魔物はさほど変化がないはずです。基本的に。
「この辺りから少しばかり猪が大型化してな、稀にはぐれ狼が出るな」
森番のおじさんが周囲を軽く見回して教えてくれます。
大型化した猪。
「猪は腐り毒を持っとるから食える部分は少ないぞ。……ネア坊、露骨にガッカリされると期待させたようで罪悪感がわくではないか」
わ、笑ってるくせに!
でも、清浄かけたらいけたりしないかな? あとで試そ。
【腐り魔物は旧迷宮の残滓ですね。いくらかの大型魔物をまだ狩り切れていないようですね】
つまり、『蒼鱗樹海』の加護外の強め魔物ってことかぁ。
【『清浄』をかけても消滅するだけですよ】
え!
迷宮外で活動しているのに消えるの!? なんか詐欺っぽい。お肉。
「ティカ嬢も、ハーブ坊もあんちゃんの動きを阻害せんようにこっちに寄っておいで、武器は使えるようにしてな。まず、考えることは自衛だぞ」
ティカちゃんは棍棒を握り込んで頷いています。ヤル気たっぷりですね。薬草摘みは? わいたの始末してから? あ、はい。住処を追われた怒れる魔物は出てくると思います。
「あああぁ、少年少女の期待の眼差しがプレッシャーでもーえーるー」
え? 二人とも周囲確認していて班長さん見てなかった気が……?
「あんちゃん、テンション大丈夫かね?」
えーっと、ドンさんの位置を確認。声の届く距離らしくひらりと手が振られます。いつでもいいってことですね。
では。
馬車三台が並べる広い道を拓きましょう!
『伐採』ですよ。
そうですね。後に木の根っこの処理はありますが広範囲に伐採できましたよ。木の根の処理は後続班にお任せなのです。
「ネア坊、半分より少ない量凍らせれるかね?」
簡単ですよ。
『冷却』です。
動きはじめた魔物の足を捕まえるように冷却です。ちょっと『絡まり』も使って魔物拘束ですよ。アッファスお兄ちゃんがコレお得意になってたんですよね。ちゃんと私にもできましたね!
「ネア坊、よくやった。そのまま三十数える間維持な。あんちゃんはすり抜けさせていいのはウサギ以下の魔物だけな」
「え! 森番さん、俺じゃちょっと危険域ぃいい!?」
えっと、三十。
二十九、二十八。あ、兎が怒ってる。二十八、ん? 二十七だっけ?
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