第244話 次の井戸に向かいます

 ティクサーは町としての規模は王都に並び立つほどの大きさがあります。元々迷宮を挟んだ国境の町ですからね。迷宮がなくなると影響も大きかっただけで。つまり場所はつくれる余裕はあるがなにを言っても安全確保の人材不足となるそうです。人材育成にさく人員はいねぇ。くらいの勢いらしいですよ。グレックお父さんはいつも通りに帰ってきているように見えて晩ごはん終わったらこっそり再出勤しているくらいには大変らしいです。

 新人冒険者に過ぎないネア・マーカスとしてはすこしでもグレックお父さんのお手伝いはしておきたいような気もします。

 正直なところ、王都でもう少し引き受けておいて欲しいところですよ。クノシーは元々が中継の町だったそうなのでしかたないかもしれませんけどね。

 クノシーの北側、今は『魂極邂逅』があるわけですが人里ことごとく廃村ですからね! 一番ギリギリまで残っていたのがサティアさんの織物の里だったそうです。

 もとは鉱物の加工をする鍛治工房や希少鉱石を磨き装飾品を作る細工工房があったそうですがそういった技術者の方は少数の老齢の方々が王都に残っていた以外は国を出てしまっているそうです。

 クノシーとティクサーには帝国の学都に遊学していた王族の方々が領主として着任したそうです。一緒に連れ帰った人員は一部を除いて一度王都で適正を確認されてから各地に配備されるそうですよ。

 教育にまわる人員? そんな余裕あるわけないですね。

 教会の庭師のおじさんだって何人か集めて知識の伝達をしていたけど、人数には限度があるだろうし、増える速度に間に合わなければ孤児を世話する教会だって間に合わなくなっていくでしょう。

 だから、とりあえずだけでも資金稼ぐ手段を冒険者ギルドとしては斡旋したいんだろうなぁとは思います。

 寝床になる場所を得て、最低限の食べるものがないと冬の期で凍死の危機が待っているし。迷宮がある分、日々小金を稼ぐことはできるかも知れませんが、どうなるかはわからないのです。

 ドンさんはあっさりとスライムの核を貫き戦闘を終了させましたよ。そのあとをちゃんと清浄かけときますねー。

 ドンさんを見つめる売り子さんたちの目がキラキラしてますね。

 見てわかる強さはかっこいいですもんね。

「姉さん、次はどこ?」

 ドンさんに終了印をもらって一息ついたら弟くんが聞いてきましたよ。次は、ああ。ティカちゃんちのあたりです。

「宿場街の井戸場ね。ここ確かティカちゃんちのそばだよ」

「じゃあ、お店開いてたらお昼ごはんにしようよ」

「ティカちゃんちで」

「うん。ティカちゃんちで」

 なんで井戸周辺にたどり着くのにこんなに道がややこしくなっているんでしょうか?


【井戸周辺に不審者接近を妨げるためでは?】


 不審者?


【有毒物質を投下する敵対者が一時流行りましてある一定の年齢層の人々は警戒ガチですね】


 そんなことしたらエリアボス蛇に襲われると思う。

 あと天水ちゃんはやった相手をマーキングして確認追跡とかしてそう。


【そしてそれを共有しているんでしょうね】


 ま、天水ちゃん水路完全支配したって言ってましたしね。

『ヌシ様にナビ提供。目的の井戸への近道』

 ポンと地図が目の前に浮かびます。弟くんには見えてないようで、迷わず地図に浮き出ているシルシ通りに進んでいきますね。

「姉さん?」

「弟くんは道を行くのに迷いがありませんね」

 弟くんはぱちりと瞬きしてから笑います。

「だって姉さんがクノシーに行っている間に探検してたからね。道案内なら、ある程度はできるよ」

 暗にぼーっとしてる姉さんとは違うと言われている心持ちになりましたよ。被害妄想でしょうか?

「おかげで知り合いも増えたしね」

 知り合い?

 道がわからなくなったら大きい道への行き方をその辺の人に聞いて顔見知りを増やしたとのことです。

 私には弟くんの外面は真似できそうにありません。



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