第3話 宇宙飛行士の話
エラー音がけたたましく鳴る中で唐突に始まった夢だった。
筒状のよくわからない銀色の機械の中に2人の宇宙飛行士みたいな2人がいた。人の体型よりひと回り大きい服でヘルメット被っているし、中を走ろうと蹴る足が地につかない、とするなら、漠然とここが宇宙を飛行しているロケットの中だということが理解できた。
そしてこの非常事態的な音が鳴っている今、2人が乗っているロケットは大事な部分が故障して走行不可能になったことも理解できた。夢の中ではもっとロケットの故障の原因を分析して原因が分かっていたのだが、どうやら人力では修復不可能なところまで至っていたようで、2人がやることはもう決まっていた。同乗していたもう1人と、脱出ポットへと向かっていたのだ。
映画のようにエラーを示すランプが赤く何度も点滅している中、ポットの操作を見て同乗者が何やら騒いでいた。どうやら本体と脱出用を切り離す手順が複雑だった上に彼の操作ではポットが開かなかったらしい。何より、その脱出ポットは1人用で、もう一人分がどこにもなかったのだ。
ひとまず慌てふためく同乗者を先に乗せて、もう1人が代わって操作をしていると、ロケットから危険信号の音とアナウンスまでが追加された。あと少しで機体は爆発すると言うような内容だったと思う。言語は日本語じゃなかったと思うが、夢の補正なのか意味がはっきりと分かった。時間がない。ロケットはもうすぐ塵になる。
それでも順序よく操作したらポットは作動して、ロケットと切り離された。
切り離されたポットのガラスの向こう、防護服のヘルメットじゃ更に顔なんて見にくいはずなのに、同乗者が驚きで目を見開いているのがはっきり見えた。
それもそうだろう、ポットの中には同乗者。爆発寸前のロケットには、もう1人だけ。
脱出ポットのガラス越しに映る自分の方は、背後に炎が迫っていることも、脱出ポットへ無事乗せられた同乗者を見送る自分自身が笑っていることも不思議とはっきり見えた。
『俺はどうせ帰っても、誰も迎えてくれない。だからお前が帰るんだ。じゃあな、ちゃんと帰ってやれよ。』
そんな気持ちを強く感じた瞬間、音の一切が途絶えて、目が覚めた。
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