第61話 仕方がない事なのである

「はい? 私が男性に見えますか? 見ての通り女性ですけど……異性と見れないほどに女性らしくないという事かしら?」

「いや、違う違う。 女性と男性が同じ空間で着替えると言うのは、おかしくないか? おかしいからこそ俺は女子更衣室で着替えずに離れた場所で隠れながら着替える事にしたわけで、男女が同じ空間で着替えても良いのならばわざわざこんな面倒臭い事をする必要はないと思うんだが?」


 そして俺がジュリアンナに女性であることを確認するとジュリアンナは変な方向へ勘違いし始めた為すぐに訂正を入れて男女が同じ空間で着替えるのはおかしな事ではないのか? と指摘する。


「それはクロードが気にしすぎだと思うのだけれども、そうですね。 同じ空間で着替えてしまった場合は間違いなくクロードの身につけていた何かが無くなるだろうし、最悪衣服が全て無くなる可能性だってるからこそクロードが着替える場所は施錠できる部屋か誰にも知られていない場所で着替える必要があるという事よ。 だけれども着替えている姿を見るのも見られるのもそこまで恥ずかしいとは思わないわね」

「…………なるほど」


 要は今まで男性という異性と一緒に暮らしてこなかったからこそ羞恥心はバグってしまった上で男性への欲望は跳ね上がってしまっているという事か……。


 そしてジュリアンナは俺の衣服を盗むようなことはしないし、着替える姿を見られても恥ずかしくないから一緒に着替えるのに何が問題なのか分からないという事なのだろう。


「分かってくれたのならば何よりです。 では遅刻する前に早く着替えて修練場まで行きましょう」

「あ、あぁ。 分かったよ」


 結局俺の価値観は前世の価値観なのでこの世界の女性が『着替えている所を男性に見られても何も恥ずかしくない』というのであればそれに従って俺も一緒に着替えるべきだろう。


 俺が駄々をこねた結果ジュリアンナまで授業に遅れてしまうのは良くないしな。


 なので決して俺がニーナやジュリアンナの着替えている姿を目に焼き付けたいだとか、彼女たちの下着が見たいだとか、そういう感情であえて俺が折れる事でニーナやジュリアンナたちと一緒に着替える事を選んだというわけではないという事だけは言いたい。


 でも、一緒に着替えるという事はどうしても見えてしまうのは仕方がない事なのである。


 そう、仕方がない事なのだ。


 そして俺はニーナとジュリアンナが二人横並びで着替え始めている光景を合法的に眺めながら着替えるのであった。

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