第52話 ジェットコースターと機関車

 採石場から、木製レールでトロッコを運用しているが、簡単なつくりの物を勾配を利用して王都まで落としている。

 これがスピードを緩めるために、適度に上りを入れて、最後は水でブレーキをかけている。


 これが、作業員の間で流行っているようだ。


 現在3交代制で労働をしているが、現場の宿舎から王都へと買い物に来るときに、石の上に乗って、下ってきているようだ。


 戻りは、さすがに歩いているようだが、昇りのレールも欲しがっているようだ。

 現在、トロッコの引き上げに利用しているのは、単純に一定速度で回転する魔道具を使い。リフトのように運用している。つまり、途中はぶら下がっているので、乗ることができない。それを、下にレールを敷けば、物や人間が乗れるということだ。


「そんな声が、現場から上がってきています。何とか、なりますでしょうか?」

「そもそも、トロッコの上に乗るな。何かあれば死ぬよ」

「ですが乗ってみると、非常に楽しいらしくて……」


「まあ、下りだけだけれど、ジェットコースターだもんなぁ。ジェットコースターって安全システムが難しそうだよな。まあ簡単なのを考えるとしてトロッコ列車を作ろうか。回転する魔道具があるからクラッチとギアだけ組めばいいだろう。ブレーキは、放熱を考えてディスクブレーキを採用しよう。作ってみてダメなら、ケーブルカーだな」



「宰相。カミヨ様、あの方は素晴らしいな。こちらが難問だと思うことをお願いしても、あっという間に奇抜な案が出て、問題が解消される。もうあの方が王でいいんじゃないか?」

「そうですね。強さはけた違い。知識もある。私もそう思います。引継ぎの手続きをしますか?」

 そう言われると、王の顔が引きつる。


「本気か?わし泣くぞ」

「ご自由に。ご存分に。心逝くまで」

「なんだか今、物騒なことを言わなかったか?」

「気のせいです」


「イスィンコ。勇者よ。おまえにも同じ問題について、考えよと言っていたがどうなっている」


「王よ。私も現場を見て、恨みを買ってでも、現場一帯をしばらく封鎖するくらいしか。考えつきませんでした」

「それでは、解除すれば元に戻るだろう」

「それでも幾度か繰り返せば、どこかに行くだろうと……」

「別が、混むだけじゃな」


「一方。今泣いているのは、先が読めなかった市場の関係者と、犯罪者くらいじゃな」

「…………」

「まあ今回の改革は、長年かかってわしらも出来なかった事。それをわずか1月ちょっとで終わらせてしまった」


「王様。それも、民だけではなく、生産者の救済も行っているようです。生産者と専任契約と言うことをして、最低限の保障と生産調整および災害時の補填まで契約しているようですな」

「その補填の財源はどこから?」

「市場での売値より、全体的に少しだけ値段を高く設定して、余剰分を内部留保に回すとなっています。それと一般の民向けに、保険というものを始めるようです」

「保険とはなんじゃ?」

「毎月少しずつ金を入れることにより、病気やケガ、働き手が死んだときに、契約に従い金が支払われるようです。相互扶助契約と言っていましたな」

「相互扶助契約か、少しずつ出す金を、その時困った民に回し助けるか。……それは本来国策ではないのか」

「そうですな」


「わしら、要らんのじゃないか?」

「そうですな……」


 しおらしく答えた後に、宰相は微笑む。

「そんな王に、とどめをしましょう。店や流通、生産者の子供を預かる場所を作り、ある程度の年からは、読み書き計算を教えるようです」

「貴族街の学校と、同じものか?」

「同じようなものだそうです。礼儀作法は無いようですが」


「ううむ。それについては、あまりうれしくないな」

「そんなことは聞きました、統治上あまり国民が賢いと治めにくいというと、それは上が悪い。国力を上げるには、国民の教育だ。統治で楽をすると、国力が低いから簡単に侵略される。とのこと、です。王様」

「ぐっ国力な。うん。重要だと知っておる」


「宰相。もうないな?」

「先ほどの保険のことで、周りの町や村にも広げて、取りまとめを手伝えだそうです」

「わかった。騎士団の詰め所で、扱うようにしよう」

「では、手配いたします」



 そんなある日。空き地に遊園地なるものができていた。

 火災や敵襲時の籠城のために随所に空き地がある。

 その一つに、何やらカミヨ様が造ったようだ。


 大きな、ブランコというものや、滑り台。何やらレールを作り、その上をかごが走るジェットコースターなるもの。

 同じくレールに乗っており、先頭の窯に火をくべ湯を沸かすと、ゆっくり走る汽車なるもの。シーソー? は危ないからと言って、棒の両側のいろんな長さの所にかごを付けおもりを載せて釣り合わせるもの。外の現場で使っている跳ね釣瓶のようなものだ。


 その中で、汽車なるものはテスト中ということで、たまには子供を乗せていたが基本触らせず、ほかの物は遊ぶ許可を出していた。



「ジェットコースターを作るときに、避難用に要るかなと言って、作り始めたけれど列車はできたの?」

「いや、回転する魔道具だと効率が悪い。今蒸気機関と合わせてみようとしている」

「ハイブリット機関車ね」

「早めに造り、避難をさせるときに利用をしたい。ただ、勇者が見ると気が付くよな」

「そうね、レールとか必要だものね。それよりも簡単に転移のゲートとか作れないの?」

「あーそうか。研究してみようか。空間魔法って。……自分の亜空間に繋いでいるのと一緒か」

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