第39話 獣人領へ出発、その途中2
時間が経つと、祭りは狂気の様相を呈して来る。
気が付けば飲む者、食う者、踊りを踊る者。
俺のランペイジ退治を芝居している者。
いつの間に、舞台なんか建てたんだ。
若い奴らは、舞台の上で告白合戦をしている。
「ちょっと待った」が出てきた。
なんだろう。なんだか懐かしい?
「昔テレビで、あんなのがあったわね」
「ああ。テレビでやっていたのか。なんだか、見たことある光景だと思った」
「普段お仕事をしていると、機会もないし、この雰囲気とお酒の力を借りて告白合戦も面白いわね」
「日本の盆踊りなんかも、見合いと告白の場という意味があったらしいけどな」
「そうなの?」
「ああそうなんだ。告白とかして。そのままその辺でエッチするものだから、明治時代には盆踊り禁止が出たこともあったらしい」
「その時代って、周りは暗いし、お酒飲んで。今のこの町と同じ状態ね。周りを見るのが怖いわ」
「それも、一つの祭りだ」
「何を人間は、うだうだと。気に入れば、子づくりして何が悪い」
「フェンリルはそれが自然な姿だろうが、人間という種類は力も牙もない、だから集まり集団で生活をする。そうなると、色々な決まりごとができるし、必要なのさ」
「力なきものの、知恵か」
「そうだな」
「主様。先ほどの話に出てきた、テレビとは何でしょう?」
「テレビは、俺のいた国で有ったもので、カメラという物があって、これは見えるものを写し取る物。そしてテレビが、カメラで撮った絵を再生する物。それを電波と言って、実際はちょっと違うが、電気で作る。見えない波に、取り込んだ絵を乗せて、瞬時に遠くまで送れる物でつないでいた」
「それがあれば。遠くまで話を、瞬時に送ることができるのですね」
「そうだ」
「それは便利ですね。海峡の基地と王都を、伝令が、何日も馬で駆けて伝えていますが、それが必要なくなり。伝言の誤りも、減ると言うことなのですね」
「そうだな。そういうのは無線機というんだ。主に声だけを伝えるもの」
「そのようなものが。主様のお国は恐ろしいですね」
「まあね。ボタン一つで、遠くの国を破壊できるようになっていたからね」
「そういえば、伝承で聞いた気がします。ハイヒューマンの都市は、世界中の都市を瞬時に移動できたとか。争いが起きたときには、双方ともに一瞬で滅び。長らくその後には生き物が住めなかったとか。それを繰り返していた時に、邪神が生まれたとなっています」
「そうなのか。何処も一緒だな……」
「さて。もうさすがに、部屋に帰るか。スコットはどこだ?」
「あっ、あそこで注文を取っているけれど、幾人もいるように見えるのは、私の目がおかしいのかしら?」
「おおい、スコット」
おお、複数人いたのが、こちらに来るのに従って一人にまとまって来た。なんかのスキルか?
「お呼びでございましょうか?」
「俺たちは、部屋に戻るけれど、もう一匹、ボアを出しておくから楽しんでくれ」
「承知いたしました。お疲れのところ、お付き合いいただきまして、ありがとうございました。それに、重ね重ねになりますが、町をお救い下さいましてありがとうございました」
「いやまあ。こちらこそありがとう。それじゃあ戻るよ」
「はい。おやすみなさいませ」
「あっ。しまった。帰っちゃった」
カミヨ様に、お礼を言わなければと、思っていたのに。この前の時にも、お礼を言えず。そして今日もまた。それにしても、また奇麗な人が、おそばに増えていた。
「主様と一緒にいると、次々にわたくしの知らない、新たなことを知る機会が増えてきますね」
「主。こちらの家には、寄るのかの?」
「寄りたいが、あそこには馬車では行けないからな。今回は無理だな」
「そうか。良い餌場だったのだが」
「この感じだと、獣人族の大陸でも同じ場所があるだろ。そういうデザインで、星が作られている気がする」
「そうか。ならまた、新たな家か。楽しみじゃの」
「そうね。短い間だったけれど、あそこは、家という感じがするわね。まあほんとはミスルールにあるのが、本当の家だけどね」
「そうじゃな。主と会って楽しかったが。わしは人化をマスターして、生活を始めた大事な場所だ」
「そうかあ。向こうじゃあなたはペットだったものね」
「なんじゃ? ペットが何か分からんが、ケンカを売っておるのか?」
「おねえ様方。お二人ともお忙しそうだから。わたくしは、ご主人様とお風呂にでも」
「「なっ」」
「おおすごいなサラス。二人のけんかが、一言で収まった」
つい、サラスの頭をなでてしまった。
その瞬間。みちよと、ふぇんの顔が引きつる。
「「サラス。恐ろしい子」」
翌朝。こそっと馬車を用意して、乗り込む。
「本当に、皆に挨拶せずに、行かれるのですか?」
「ああ。町の状態を見ると、朝まで騒いでいたんだろう。寝かせてやれ。それにまた帰ってくるよ」
「さようですか。それではまた、お会いできるのを楽しみにしております」
「それじゃあ、スコットもげんきでな。マチェライオとかにも、体に気を付けるように、よろしく言っておいてくれ」
結局家には寄らず、海峡の基地へ行く。
話が通っていたらしく。馬車を預け、サラスが魔王から言づけられていた基地への書簡と物資を渡す。
ここでも、サラスは人気があるらしく。ずいぶんにらまれた。
すぐに出ていくし、いいさ。
少し休憩を取った後、桟橋部分へ行く。
先端で、念話をシーサーペントに繋ぐ。
少し離れていたのか、15分ほどで、沖合にでかい物が、海面を割る勢いで近づいてきた。
おいおい。あの勢いで来ると、この辺り水没しそうだ。そう思っていたら。
〈すみません。主。普段は、陸のことなど気にしませんので。少しゆっくり近づきます〉
〈よろしく頼む〉
さっき慌ていたせいで、つい、念話で水没することを伝えたようだ。
シーサーペントが顔を出す。
陸の方から。
「「「「「おおぉぉぅ」」」」」
と驚きが上がる。
頭を下ろしてもらい。
乗せてもらうと、陸の方へ手を振り、基地の人間達に別れを伝える。
「さあ行こうか。少し遠回りだが、頼むよ」
〈はい。一度下見をしましたので、大丈夫です。お任せください〉
〈すまないな〉
〈あまり役に立てませんので、この位は、お任せください〉
そういいながら。出発をした。
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