第21話 情報収集

 そんなこんなで、楽しく飲み。

 

 つまみが出来上がってきた頃、周りで倒れていた奴らが起き上がりだした。

 俺たちを見ると、要件を思い出したのか。

「なんか使いやがったな。慰謝料出してもらおうか」

「そうだな。一晩相手しやがれ」


「おれか?いやだよ」

「おまえじゃねえ!!」

 あら怒ったな。ちょっとした冗談なのに。


「何でこういう奴らは、言うことが決まっているんだ。定型句模範集でもあるのか?」

「ああ? 何だお前は、そこは俺たちの席だ」

「いやいや、ここは俺の席で、ちょっと席を外していただけだ」


「何でアンタたちは入ってきてるんだい? 出入り禁止といっただろう」

「やかましい。俺たちはランペイジさんの所で、世話になっているもんだ。そんな口を聞いて良いのか? ああん」

「この前も言っていたから知ってるよ。それでも人様に迷惑をかけるような奴らは出入り禁止だよ」


 チンピラAが女将さんの胸に手を伸ばす。

 俺はちょっと神気を開放する。


 その瞬間チンピラの手が止まり、ガクガクと震え始める。


「一体。お前たちは何だよ? さっきから」

「おかみさんも、言っているじゃないか。出て行けと」


「おかわり」「わたしも」

「はいよ」


 ガクガクしているチンピラを無視して…… そんなに飲んで大丈夫か?

 チンピラたちは、何かアイコンタクトをしているが。通じたのか?

「てめえ、目付きが悪いんだよ」


「良いのか? もう一人は首を振っているぞ」

「えっ?」


 奥にいたやつの気配が変わり、こそっと剣を抜いた。

 もう少し神気を開放する。

 ガクガクが、全員に広がった。


 もう、最初のやつは涙を流している。

 そういえば『習熟レベル5くらいで人や魔物に干渉できる』って言っていたよね。

 どうすれば良いのかな?


「とりあえず座れ」

 と言ってみると、素直に座り始め、座ったままガクガクしている。

「この辺りのことに詳しくなくてな。教えてくれないか?」


「何でしょう?」

「ここから王都までどのくらいだ?」

「ちょうど海峡から、半分あたりです」


「そうか。最近何か変わったことはないか?」

「しばらく前に、神が遣わしてくれた勇者が現れて、今王都では王位決定戦が開催されています」


「王位決定戦か面白そうだな。今から行っても間に合わんか」

「いえ、王位が決まるまで、ずっと続きますから、大丈夫です」

「そんなに、長いことするのか」

「勝ち抜いたものがケガした場合。けがが治るまで順延しますので。それに敗退したものは今季再出場は出来ませんが、後からでも出場者が増えることもありますし」


「そんなのでいいのか?」

「ええ。出場者の試合を見て、あまりにもふがいないと、その、前魔王とかも出てきますので」


「面白そうだな」

「そうね、あなたも出る?」

「主なら大丈夫」

「まあ様子だけでも、見に行こうか」


「じゃあいいよ。此処であったことは忘れて帰って。ただし、ここにはもう近づくな。命令だ」

「「「「「はい」」」」」


 チンピラたちは、ぞろぞろと出ていく。


 周りの客は不思議そうな顔をしているが、小声でしゃべっていたから訳が分からないだろう。


 意識を向けて、命令すればいいだけというのは良いな。色々使えそうな能力だ。神様ありがとう。


「お待たせ? あれ、あいつらは?」

「お話合いをして、帰ってもらいました。もう来ないと思いますよ」

「それならいいけどね。あいつらの言っていた、ランペイジと言うのが向かい側をまとめてしまってね。こっちまで手を出そうとしてね」

「ああ。お姉さん方が、立っていた方ですね」


「あの子たちは、元々あっち側で店をしていた家の子たちだよ。ランペイジに言いがかりをつけられて、借金してね。ひどい話さ」

「なんでそんな借金を? 言いがかりなら、払わなくていいのじゃないか?」

「さっき、奴らを見ただろ。うろうろと営業妨害をして、こっちが文句を言うとけがをさせられたと訴えるんだよ。それでお役人に訴えに行って、暴力を受けていたのを見たと言う証言が、ぞろぞろ出てきてね」


「そうなんだ。監視カメラもないし、困ったね」

「何だい? その監視何とかというのは?」

「自動的に撮影してくれる、魔道具ですかね」

「そんなものがあれば、便利だけれどね。あっても、きっと目が飛び出る位高いんだろうね」


「そう言えば、魔道具ってどんな物があるのですか?」

「夜に使っている。あの天井に付いているのも魔道具だよ。ライトの魔法を使える。魔石が必要だけどね。魔道具を、見たことが無いと言うのは珍しいね」


「うちの村では電気。うーんと、雷の魔法を使えるような威力にまで抑えて、その雷の力で使える道具が一般的だったんです。魔石の補充ではなくて、その雷の利用を契約する感じですね」

「よくわからないけれど、変わったところだね。誰か有名な賢者でもいてその形を作ったのかね」

「そうですね。エジソンとか」


「聞いたことがないね」

「そうですか」


「それはそうと。ボアを下ろしてくれたんだって。ありがたいよ。最近獲物が少なくてね」

「ああ、マチェライオが言っていましたね」

「ここいら辺り、全体だからね。ランペイジもあせっているだろうね。マチェラは向こうには、絶対卸さないから」


「ふうん。ランペイジね」

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