第15話 ハイエルフ奴隷の憂鬱 2

「待たせたか?」

 パイステアが、執務室のドアを開けると、ハイエルフが二人、30半ばに見えるのが一人、もう一人は失明している小柄な女だった。ステネサとスダナである。

「随分待たされましたよ。」

「いいえ、大して待ちませんでしたわ。」

  “全く、身分の卑しい女というのは。”パイステアは、ステネサを呆れて、少し睨んだ。

「あら、秘書官様は…、羨ましいねえ。あの臭いを、プンプンさせて、明るい内から楽しませてもらったのかい?」

 半ばに揶揄い、半ばに嫉妬、半ば羨望、半ば賞賛、半ば…色々な顔が見えたが、

「は、早く報告をなさい。」

 80年は、生きているはずの妖艶な女は、ハイエルフの世界では、一般庶民である。高位の騎士の家系に生まれ、女ながらも騎士として、それなりに将来的を渇望されたパイステア達とは違う。だが、商売や事業などで、それなりの成功を遂げた。それが仇となった。富を手にすると、如何しても、貴族との関係ができて、政争に巻き込まれ、奴隷の身にとなった。そう聞いている。パイステアとは、部族が違い、同じ奴隷商人の違う檻の中にいた関係である。それを言うなら、皆そうだった。王族姉妹の二人以外は、誰一人として、同一部族出身者はいなかった。

「そうですよ。パイステア様の言うとおりですよ。」

「よく言った。始めてくれないか。」

 彼女は、ハイエルフの神官の家系らしかった。貴族である。適性だということで、領内の領主所有、共有の森、湖沼の管理を任されている。

 ステネサは、領内のエルフ達との交渉と領主の必要物資の森からの調達で出ていたので、森での人間、エルフの関係、さらに領外のエルフ、オーガの侵入問題を伝えるスダナを連れてきたのだ。

「ネイラは、どうした?」

 スダナの護衛、付き人としているハイエルフの少女だった。

「別室に待たせています。」

 パイステア。

「ハーレムに、入ってませんからね。今夜、ハーレムに加入させますか?」

 ステネサ。

「子供まで抱くほど、人間が広くないと言っているだろう?早く報告を始めてくれ。」

 ようやくステネサが、報告を始めた。

 本当は、本音は、年貢も、労役も、都市、町からの献上金、通行する商人からの商業税も増やしたい。しかし、それは反発を産むだけでなく、将来の発展を潰すことになる。かといって、自分の節約生活を続けるしかないが、使用人達、奴隷達の待遇も考えてやらねばならない。“とりあえず、風呂の改修は、来年だな。”全てが順調の中、倹約と支度金の目減りを気にしながら、領内の施策に補填することを続けることを決めた。

 その夜は、始めは、

「こんなおばあちゃんを抱くとはね、ご主人様も変態だねえ。でも、長年の手管で楽しませてあげるよ。」

と言っていたステネサが、涎を流したまま、ぐったりして動けなくなったのを、横目にスダナが、

「も、もう…。」

て叫ぶように喘いで、動きが止まった。その彼女をディオゲネスとパイステアが優しく横にした後、二人はゆっくりと唇を重ねて、長い間舌を絡ませた。

 唇を離すと、彼は彼女をそのまま抱きしめて、一体となった。動きながら、

「ハーレムの噂が、帝都まで…大丈夫ですか?」

「問題は、どう皇帝陛下以下が思ってくれるかだが…。」

 彼女の弾力のある乳房の感触を、自分の胸で楽しみながら、その結果が心配を心配になっていた。パイステアも同様だったが、二人は動きも、快感を感じるのも止められなかった。

 動きの止まったパイステアの体を抱きしめながら、ディオゲネスは彼女がグッタリするまで待った。

 その翌日、ディオゲネスは早速館のハイエルフ女奴隷達全員に、魔法力などの強化を試してみた。ただし、ディオゲネスはパイステアの時ように、胸を揉んだりするようなことはしなかった。パイステアは、安心するとともに、なんとなく複雑な気持ちになった。“何で私には。”低く見られたような悔しさ、特別に見られたかもしれない誇らしさ等などだった。

 

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