第204話
「私は今日から浮遊大陸の守護竜じゃなくてチョコブリンの守護竜になるぞ」
「いやいや、落ち着いてエレ姉。チョコブリンに守護竜なんていらないから。それに浮遊大陸の守護竜じゃなくなったらアンブロシアが収穫できなくなっちゃうんじゃない?」
俺がチョコあげたせいで浮遊大陸からエレ姉が居なくなる。なんてことになったらマジで鳥獣人達から恨まれる。
「最近アンブロシアの味にも飽きてきてたし。浮遊大陸の守護竜をする旨みがないなと思っていたし、アンブロシアの守りは私が連れてきたキングトプスやトリケラトプスで充分できる」
アンブロシアの味に飽きたって……
食べれば寿命が延びる伝説の果実なんだけど……
それを味が飽きたって…
それに今さっきアンブロシア好きって言ってたじゃん。
キングトプス達がここにいるのも驚きだけど。
それは後で聞けばいいや。
とりあえず。今はエレ姉を浮遊大陸から出て行かないように説得しないと。
言葉で説得するより食べ物で釣る方が早いだろう。
「そう言えばエレ姉。アンブロシア食べて見たいんだけど」
「ん?そうだな。これがアンブロシアだ」
そう言ってエレ姉が空間収納から真っ赤で艶のあるりんごを取り出した瞬間、りんごの甘い匂いが辺りに充満する。
さっきまでの匂いが残り香と言うのがようやく納得できた。
「個人的には生より乾燥させてからチョコでコーティングするのが好きだけど」
アンブロシアをエレ姉が気に入ったチョコでコーティングしてしまおう作戦。
チョコを溶かす湯煎の準備をしながらアンブロシアを切る。
種は入ってないみたいだ。
チョコでコーティングする前に1切れそのまま食べてみる。
「これは今まで食べた果物の中でダントツで美味い」
匂いで察しはついてたけど激甘。
滅茶苦茶美味しいけど量はいらないかなってと俺は思った。
とは言えチョコでコーティングするのが勿体なく思えてしまうほどの美味しさだ。
「チョコブリンじゃなくてビターチョコを使おう」
チョコブリンはかなり甘めのチョコなので、激甘なアンブロシアをコーティングするには向いてない気がする。
なら、苦めのビターチョコをコーティングすることで、アンブロシアの甘さを更に引き立てることができるんじゃないか?
と言う訳でカカオ80%のビターチョコを溶かしてアンブロシアにコーティングしていく。
途中、ビターチョコをつまみ食いしたエレ姉が苦っ!?と騒ぐ事故があったけど。
それ以外は特に問題なくチョコでコーティングされたアンブロシアが完成した。
エレ姉がさっきの甘いチョコでも作って欲しいと言うのでそっちでも作った。
「確かに苦い方のチョコでコーティングした方がアンブロシアの甘さを引き立ててるわね。逆にチョコブリンを使った方はお互いの甘さが喧嘩して、これなら別々に食べた方が美味しいと私は思うわ」
「そうですか?私は甘さは正義だと思うのですが」
エレ姉は重度の甘党という事が判明した。
俺もシロナさんと同じでビターチョコをコーティングした方が美味しいと思う。
「アイギスはどっちが好き?」
「う〜ん。アイギスは甘い方が好き」
アイギスも甘い方派か。
まぁ、好きな方を食べればいいか。
「って訳でアンブロシアにはまだまだ美味しい食べ方が存在するわけですよ」
「たしかにな。そして浮遊大陸の守護竜を続けてれば、それをヒロキが持ってきてくれると」
なんか俺がお菓子を持ってくることになってるけど。転移ポイントを設置させてくれるって言うし。そのぐらいで浮遊大陸の守護竜を続けてれくれるなら問題ないか。
「そろそろ本題に入りますか」
元々はエレ姉が欲しがる人になる薬をを用意する代わりにアンブロシアを貰う。そんな感じの交渉の場になる予定だったのに。
「そう言えばそうだった。アンブロシアが私が求めていた人になる薬の材料で、ヒロキもその薬を作るためにアンブロシアを欲している。そんな話だったな」
忘れてたの?欲しいとは言えあったら嬉しいけど無ければ無いで問題ないぐらいの感じだったのかな?
「人になれば強制的にテイムされることも防げるし、アッタライイナぐらいの気持ちだったが……ヒロキよ。アンブロシアを提供するだけで私の分も作って貰えるのか?」
「当然作りますよ。最初っからそんな感じの交渉をする予定でしたし」
1番入手が大変なのがアンブロシアだから
それを提供してくれるなら他の材料はこちら持ちで全然問題ない。
ミニチュアシーホースだけは追加で手に入れなきゃいけないけど。採れる場所を知ってるし。転移ポイントを設置してある場所なのですぐに採れるだろう。
「ただ、薬の調合に時間がかかるかも。初めて作る薬だから」
ジュリアナさんもこれまで錬金してきた物の中でぶっちぎりで難易度が高い調合になるって言ってたし。
と言うか妊婦さんにそんな調合やらせちゃダメだよね。
つい最近ダンジョンに連れてちゃったけど。
誰も止めなかったけど。不味かったよね……
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