第203話

目的のアンブロシアの木を所持していて浮遊大陸の守護竜エレメンタルドラゴンが自分の姉だったと発覚してから数日。

浮遊大陸に到着した。今まで見た景色の中で1番ファンタジーかもしれないと感動するのもつかの間。

鳥獣人たちの丁重すぎる歓迎をうけ、エレ姉の場所まで案内された。


「丁重に扱われすぎて怖い。エレ姉は鳥獣人達をどれだけ脅したの?」


「そんなに脅してない。育ての親と実の弟が尋ねて来るから丁重にもてなせと言っただけだ」


うーん。まぁ、そのぐらいだったら許容範囲内かな?

脅したって感じではないし。


それだけ浮遊大陸の鳥獣人達からエレ姉が信仰されてるってことだろう。


「と言うか。弟が人間だって言ってなかったでしょ?」


普通エレ姉の弟とだけ言われたらエレ姉はドラゴンなんだから 、弟だってドラゴンだと思うだろう。

俺だってそう思う。


なのでついて早々アイギスがエレ姉の弟だと勘違いされると言う珍事が発生した。


「どうか家族の命だけはって必死に謝罪されて大変だったんだよ?」


この程度でそんなことしないでください。怒ってないですからと鳥獣人達を落ち着かせるのは本当に大変だった。


そう言えば、浮遊大陸に暮らす鳥獣人の男女比は1:10程度におさまっている。

それでも男女比高いと思うけど。浮遊大陸には鳥獣人しか人種が住んでないので、地上の男女比に比べたらかなり差は少ない。


ただ、男が地上に降りたら種馬見たいに扱われると思っているらしく、男は貿易などで地上に降りたりしない。

まぁ、浮遊大陸でも女性いっぱいいるもんね。

あえて地上に降りようと思う男はいないのかもしれない。


「確かに普通、竜の弟は竜だと思うか。人には竜のオス雌の判別なんてできないだろうし」


「後で伝達不足だったって謝っておくんだよ?」


「確かにミスをしたのはこちらだし。結果鳥獣人達に迷惑をかけてしまった。後でしっかり謝っておく。ヒロキも迷惑をかけてしまってすまなかった」


謝んないとダメだよって言っておいてあれだけど。本当にエレ姉が鳥獣人達に謝罪したらそれはそれで鳥獣人達はパニックになるんじゃ……


気づいたのが遅かったな。エレ姉もう謝る気満々だし。


「それにしてもアンブロシアってやっぱり凄いんだね。まだ見えてないのにりんごの匂いが充満してる」


まだアンブロシアの木は見えてないのにさっきからりんごの匂いしかしない。


「凄いだろう。アンブロシアの木は100年に1度しか実をつけない。今はアンブロシアが実ってない。残り香だけでこれだけの匂いなのだから。アンブロシアが実っている時期なんて浮遊大陸全体がこの匂いに包まれるほどだ」


へ〜。浮遊大陸中って凄いな。

浮遊大陸ってゲームの設定では北海道と同じぐらいの広さって話だったけど。


待って!?じゃあアンブロシアが手に入るのは100年後!?


ちょっと取り乱したけど、よくよく考えたら

数千年寿命があるみたいだし。100年ぐらい待てないこともないか。


「心配しなくても。アンブロシアは私が収穫して空間収納に仕舞ってある。いくつでもとは言えないが100個ぐらいならあげれるぐらい量も有るから安心しろ」


それは良かった。数個貰えれば充分だし。


「それにしてもエレ姉は甘いものが好きなの?」


「そうだな。アンブロシアが飛び抜けて好きというのもあるが。肉とかより甘いものの方が好きだ」


肉より甘いものが好きなドラゴンだって生きてるんだし。好みが色々あったっておかしくない。


「じゃあ、チョコブリンって言う甘くて美味しい魔物がいるんだけど」


そう言いながら形そのままのチョコブリンをストレージから取り出す。


「シロナ様。弟がゴブリンを食べさせようと……」


あぁ、そう言う反応になるよね普通。


「落ち着きなさいエレちゃん。チョコブリンはチョコってお菓子でできたゴブリン姿のゴーレムだから。ゴブリンじゃなないのよ」


姿はゴブリンだけどね。それはそうと気づいちゃったんだけど。

チョコブリンもメフィルス様が作ったんならこれからはチョコブリンお兄さんと呼ばなきゃいけない!?


「チョコブリンは本当にただ作られただけだから。エレちゃんとヒロちゃんとは別物よ?」


チョコブリンはダンジョンでポップさせることができるようにデータを作っただけであって、体をいつから創造した訳じゃないので別に兄ではないと言うことらしい。


それなら安心。


「なるほど。じゃあ、弟は純粋に私が食べたことがない甘い物をくれようとしたわけですね」


「そう言うことよ。ヒロちゃんも原型そのままのチョコブリンじゃなくて1度湯煎で溶かして形を変えた方を出せば良いのに」


だってあとから原材料はこれですって出した方がダメージ大きそうじゃん。

だから最初から原材料はこれですよ。と見せて納得してもらってから食べて貰おうかと。


「こっちがあれを溶かして板状に加工したものですね」



「出来ればこっちを先に出して欲しかった…確かに嗅いだことがない甘い匂いがするな」


エレ姉はチョコを手に持ってくんくん嗅いでから口の中に入れる。


これ以降、地上からの購入品にチョコブリンが増えることになった。




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読んで頂きありがとうございます。

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