第195話
「いやいや。ここで呑み出すってことじゃないよ?同じ値段にしてはくれてるけど。どう考えても高級品でしょ?私しか開けられない保管庫に仕舞うために私がここで貰うんだよ?」
なるほど。高級なワインを出荷してるならそんな感じの保管庫があってもおかしくないか。
「そう言うことだったんですね。てっきりここで呑み始めるのかと」
部下の分は業務用の方で良いしこっちは全部私のみたいな。
まぁ、ジェニーさんのポケットマネーからお金をだすみたいだし。
それでも文句は言えないんだけど。
「ははは、そんな訳ないじゃないですか。流石に接客中にお酒は呑みませんよ?でも1杯だけなら……」
ジェニーさんがウイスキーの誘惑に負ける前に話を進めてしまった方が良さそう。
「そう言えば昔に貰ってすかっり忘れてた物なんですけど。これワイン用の赤ブドウらしいんですけど。この種類ジェニーさんは見たことありますか?」
このタイミングを逃したら渡すタイミングが無さそうなので適当な話をでっちあげてMP交換で交換したヨーロッパのワイン用赤ブドウを渡す。
「ほんとになんでも出てくるね。これでも最高級ワインを作るために沢山のブドウを見てきてるから、見た事ないブドウなんてほんとに珍……」
途中から初めて見た真剣な顔をしてブドウを確かめ始める。
「これ、1粒食べて見てもいいかな?」
「勿論、俺が持ってても意味のないものだろすし。ジェニーさんが認めるレベルのブドウなら。それで作ったワインを呑んでみたいですし。と言ってもそのひと房しかないので。先ずは増やすところからですけど」
まぁ、MP交換で交換すればいくらでも手に入るんだけど。
「そうなの?増やすってなると契約しているブドウ農家にお願いすることになるけど。気候とかの問題で育たないかもしれないし。このブドウでワイン作ってみたいけど…ヒロキくんこのぶどうはどんなところで育ててるとか分からないの?」
「貰い物ですからそこら辺はさっぱりですね」
ヨーロッパで育てられてますなんて正直に言う訳にはいかないし。
「確実に増やしたいならプラムに頼めば良いんだよ。プラムは植物のエキスパートなんだから」
確かにキングトプスのプラムなら能力を使って確実に育てることもできるか。
本人は能力を使わないでゆっくり育てる方が好きみたいだけど。
「そのプラムって人が凄腕のブドウ農家だったり?」
「プラムはキングトプスなんですよ。材料が揃ったら、魔物から人になれる薬を使って人になる予定ですけど」
「キングトプスって植物のプロじゃん!」
という事でこのブドウはプラムさんに増やして貰うことになった。
「と言うか普通にうちで扱う材料を全て育て欲しいぐらいなんだけど」
「今まで契約していた農家の人達はどうするんですか?」
そこら辺はシビアな感じなのかもしれないけど。
突然、来年から新しい契約はしませんとか言われたら困るだろう。
「良いの良いの。最近は自分たちがいないとお酒を作れないからってちょっと天狗になってるし」
1本数百万のワインの材料を育ててる農家となるとやっぱりそう言うこともあるのかな?
まぁ、今使っているブドウより品質のいいものが見つかったから来年からは契約しない。
有り得ない話ではない。
元々の契約農家が真摯にブドウを作ってたなら突然契約の打ち切りになんかしないだろうけど。
調子に乗って色々ジェニーさんのヘイトをかってたみたいだし。
ある意味自業自得なのかな。
「ならプラムには帰ったら少しその話をしてみますよ」
「よろしくお願いします」
プラムも農業をしても消費先がなくて無駄にしてしまうから、本格的に農業ができないと言ってたし。
普通に引き受けてくれるんじゃないかな。
「話がかなり脱線してしまいましたね。一旦ウイスキーに話を戻しましょう。ちなみに何年ぐらいでウイスキーを製造できるようになると予想しています?」
「今から色々準備して、とりあえず方にになるのは大体2年ぐらいかな。味については保証出来ないけど。加速庫も使うし」
加速庫というのは中に入れた物の発酵 、熟成速度を倍にしてくれるアイテムらしい。
ただし、加速庫で5年分熟成させたワインと加速庫なしでリアル5年熟成させたワインでは加速庫なしの方が断然美味しいらしい。
ちなみにこれは同じワインを使って比べた場合ね。
加速庫を使って5年分熟成させた高級ワインと加速庫なしで5年熟成させた安物ワインだったら加速庫使った方が美味しいらしいから。
まぁ、当然っちゃ当然だな。
と言っても便利なアイテムであることには変わりない。
設備から準備しなきゃいけないウイスキーを2年で形にできるって言うんだから。
そこからよりいいものを作ったりで美味しいウイスキーができるのは実際もっと後だろうけど。
正直、ウイスキーの噂はどんどん広まって行くだろうから、早く形になるのはありがたい。
最初はジェニーさんの酒造が新しい酒を作り始めたらしい程度だと思うけど最終的にはどうやら俺が作り方を教えた酒らしいみたいなことまで広まって。
こっちにまで人が来そうだし。
ジェニーさんの酒造がウイスキーを形だけでも完成させてしまえば、ジェニーさんに聞いてって言える。
俺は本を手に入れただけで、作ったことないから説明なんて出来ないし。
その代わりジェニーさんの酒造から無理やりウイスキーの作り方を奪おうとする連中からは俺が守るってことで、バランス取れないかな。
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