第78話

「なんでってこの世界で日本食を食べれるのヒロキくんのところだけだし。ねえ、日本食広めないの?」


そんな理由でついてきてたのかよ!


「日本食を広めるって言ったってまず、米とか農作物の栽培から始めなきゃいけないんですよ?流石にそこから教えるは無理ですよ?」


農業経験なんて小学生の頃に田植えと稲刈りを経験しただけで、全然知識が無いし。


「まぁ、仕方ないか。ヒロキくんのところに行けば食べれるわけだし、それで我慢しよう」


この神、日本食が食べたくなったら毎回俺のところに来るつもりか!


「だってそれ以外に日本食を食べる方法ないし」


そもそもなんでインドの神様が日本食を食べたがるんだよ。

インドの料理を食べたがりなさいよ。


「それはインドの人達がお供えしてくれるから食べられるし。インドの神様にわざわざ日本食をお供えする人なんていないから食べれないんだよ」


どうやら神界に居る神様達は自分にお供えされたものしか食べることができないらしい。


「お供えしてもらったものを神同士で交換すればその問題解決するんじゃないの?」


「貰ったプレゼントが気に入らないから他の人に横流しするのと一緒だよ?それ」


そう言われると、神様たちがお供え物を交換しない理由に納得した。

と言うか神様達結構しっかりした倫理観をお持ちなんですね。


「ヒロキくんは神をなんだと思ってるの?」


「理不尽の権化」


特にギリシャ神話。ギリシャ神話の神々だけがやんちゃしてばっかって訳じゃ無いけど。

超有名な分記憶に残りやすいんだよね。


「確かにあの話を知っているとそう思うかもしれないけど。信仰はそのまま自分の力になるから。そこら辺に関しては神達はしっかりしてるよ」


なるほどね。お供えものをしてくれる人なんてかなりの信仰心を持っている人だろう。

信仰は神達からしたら自分の強さを決める重要なもの。

信仰が無くならないようにそこら辺神達は気をつけてるわけか。


「それにしてはギリシャ神話の神々はやりたい放題じゃない?」


「畏怖からの信仰ってのも当然存在しているからね」


そう言う感じか。


「まぁ、神様相手にダメだなんて言えないですし。精一杯おもてなしさせて頂きますよ」


「まぁ、ちゃんとお礼もするし。毎日たかりに行く訳じゃないから、許して」


ガネーシャ様は話が通じる神様だし、そう言う神様を味方につけておいた方が話が通じない神様が現れた際に助けになってくれるだろうし、優しくしておくべきかな。


「そうそう。ヒロキくんが言ってた理不尽の権化のような神だって実際に存在するし」


やっぱりそう言う神もいないわけじゃ無いのか。


そんな感じで質問したことや頭の中で考えていたことに対して色々教えて貰っているといつの間にかユーリさんが出店をやっていた場所まで戻ってきていた。

荷物は綺麗さっぱり無くなっていて

2人でお茶を飲みながら俺が帰ってくるのを待っていたようだ。


「お待たせ。このマーケットで商売している神様と話してたら思ったより時間が経ってたみたいで遅くなった。これ、パニーにお土産ね」


忘れないうちに空駆けのアンクレットを渡しておく。


「それはつけておくだけで空中で3回までジャンプ出来るようになるアンクレットだよ」


パニーは受け取って足につける。

早速効果を試すために垂直跳びをしている。

何もない空中でジャンプしている姿は中々面白い。


「空中で踏ん張ってジャンプが出来るってなんか変な感じだけど。凄い装備品だね」


言葉には出さないけど高かったんじゃない?って顔をしている。


「因みに呪いがかかっている物も混ぜっている商品の中からスキルを一切使わず選ぶ代わりにどんな物でも1万マネーって言うルールで買った物だから、それは1万マネーしかかかってない」


「それ、非合法なギャンブルにならない?そんな事マーケットでやってたらすぐに兵士がすっ飛んでくるはずなんだけど…」


やっぱりあれダメな販売方法だったんだ。

と言うかユーリさんは俺が連れてきた女性を

神様だって普通に信じてるんだね。

あれかな神獣の不死鳥様にはあってるはずだからそれで耐性がついたとかかな。


「それはまぁ私は神様だからね。それにギャンブルじゃなくて神の試練だから」


傍からするとすげぇ意味わからない言い訳だよね。

俺にルールを説明した時ギャンブルみたいな物って言ってたの忘れてないからね?


「残念だ。ヒロキくん、あれがギャンブルだったと言うのなら確かに非合法な物になってしまう。そうなってしまうと空駆けのアンクレットは証拠品として兵士に渡すことになって最終的に領主の物になっちゃうかも?」


「あれはギャンブルなんかじゃない。神聖な神の試練だった。そうですねガネーシャ様」


領主のアディルさんは知り合いだから最終的に俺のところに帰ってくるかも知れないけど。

神様パワーでバレて無いんだから、わざわざリスクを犯す必要は無いだろう。


「因みにユーリさん。ガラス瓶以外にもこんなのが有るんですけど…」


日本製のワイングラスとユーリさんにこっそり手渡す。

この世界にもワイングラスはあるけど日本製のワイングラスと比べると質は下がってしまうので。

口止め料ぐらいにはなるだろう。


「別に神様のやっていたことなんだから告げ口したりしないけど。有難く貰っておくね。正直、私が告げ口したとして領主だとしても神に対してなにか言えるとは思わないけど」


まぁ、確かに。

神様が商売していたって話自体広まっちゃうとめんどくさいことになりそうだし。

口止め料を払って黙っておいてもらうほうが安全だろう。


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読んでいただきありがとうございます。

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