第77話

「わかりましたユーリさん。家にご招待させて頂きます。でも、カエデさんはすぐに帰って来れないかもしれないですよ?」


レッサードレイクを倒したみたいだし。

俺が馬頭を倒した時みたいに冒険者ギルドで大宴会しているんじゃないかな?


念話で連絡しても良いんだけど、びっくりするから緊急時以外できるだけ念話は使わないって約束しちゃったし。

昔のパーティーメンバーが逢いに来てるって大事ではあるけど緊急事態ではないよね?

と言うか酒を滝のように呑んでるであろうカエデさんの邪魔をすると後で文句言われそうだしな。


「カエデが1人でレッサードレイクを倒したんだって街が大騒ぎだもんね。今頃冒険者ギルドで馬鹿みたいに酒を呑んでるんでしょうね」


ユーリさんも同じ考えか。


「そんな事より私は帰る準備を始めるからその間にこのマーケットをまわって来たら?」


確かに、まだユーリさんのブースしか見れて無かった。1箇所だけ見て帰るなんて勿体ないし。


「それじゃあお言葉に甘えて、マーケットを1周してきます」


「えー昔のカエデさんの話とか聞いてみたかったのに」


パニーもほかのお店見てみたいかな?って思ってたけど、そうでも無かったらしい。


「じゃあ、パニーはここでユーリさんの手伝いしてる?」


「そうする」


まぁ、せっかく2人で来たのに初手香辛料屋さんだったからな。パニーに似合いそうな物があったら買ってご機嫌取りぐらいはしておいた方が良いな。


「ダンジョンの宝箱から出てきた物が一律1万マネーだよ〜」


なんか面白そうなもの販売している声が聞こえて来たので足を止めて声のした方に向かう。


「店主ここにある物は全部1万マネーってほんと?」


「ほんとだよ。但し、ウチの商品には呪われてるものも置いてある。それを鑑定のスキルとかを使って調べるのは禁止。まぁある種のギャンブルみたいな物だよ」


なるほど。思ったより危ないお店らしい。



「コンセプトは理解したけどお客さんがスキルを使ったとか分かるもんなの?」


「私の後ろに緑色の水晶玉があるでしょ?

もしスキルを使うと赤色に変わるから1発でわかるよ。それ以外にも仕掛けは用意しているけど、こっちは内緒ね」


どうやら俺が考えている以上に色んな対策がされているらしい。

そこまでしてこの商売する必要ある?ってちょっと思ってしまった。


「色々教えてくれてありがとう。早速これとこれ買いたいんだけど」


鑑定スキルを使わなくても、ハーレムクエストにも存在した物なら何となく知っている。

中々いい物があったので速攻で買うことを決める。

まぁ、もし呪われても光魔法でなんとかなるだろうと言うのもそこまで警戒していない理由だ。


「ごめんね〜おひとり様ひとつまでで販売してるんだ。そうしないと君みたいに宝箱から手に入る物に詳しい人に呪いがかかってない物を根こそぎ買われちゃうから」


確かにそれなら仕方ない。パニーにあげるつもるのアンクレットだけ買おう。


「じゃあ、空駆けのアンクレットにするよ」



空駆けのアンクレットは空も駆けることが出来たと言われるスレイプニルと言う魔物の鬣を紐に蹄を数珠状に加工したものを使って作られている物で、3回まで空中でジャンプすることができるようになる装備品だ。


スレイプニルはハーレムクエストではテキストで名前しか出てこなかったので実物を見たことは無いけど、この世界にはいるのかな?


俺も欲しいけど、武闘家のパニーが使った方が有効活用してくれるだろう。

実用性重視のプレゼントになっちゃったけど。許してくれるかな?

まぁ、似合わない訳じゃないし、俺には服やアクセサリーを選ぶ才能は無いので諦めて欲しい。


「このアイテムがどんな物かも完全に知ってるんだね。じゃあ大事に使ってね」


店の人に1万マネーを渡して空駆けのアンクレットを受け取る。


「因みに店主さんはなんて言う名前なの?」


「君とは長い付き合いになりそうだし。名乗っておこうか。私の名前はガネーシャ。よろしくねヒロキくん」


ガネーシャって象の顔をした学問とか商業の神様の名前だっけ?


「そうそう、それであってるよ」


この人当たり前のようにこっちの思考を読んで来るぞ。


「貴方が神様だってのは分かりましたけど。なんで現世でこんなギャンブルじみた商売をしてるんですか?」


火之迦具土神様は現世には簡単に行くことは出来ないって言ってたのに。

この神は現世をかなりエンジョイしているようだけど。


「そうは言ってもこれが私の仕事だしね。神獣達と難易度は違うけど。これも一種の神の試練なんだよ」


「呪いのかかっている物以外を選べば試練合格ってことか」


「そうそう。その代わり正解の物は人類には中々手に入らない物を用意してるんだよ」


確かに空駆けのアンクレットはレア物だ。


要するに人類に試練を与えることが仕事の神様だから現世で自由にしているってことね。


「そう言うこと」


色々聞きたいことがあるけど、そろそろユーリさんの撤退作業も終わってるだろう。


「すいませんガネーシャ様。そろそろ仲間と合流するので、今日はこれで失礼します」


「そっかじゃあ私も今日はここまでにしておこう」


ガネーシャ様が指パッチンすると広げてあった商品が全て消える。


「じゃあ、ユーリちゃん、パニーちゃん達と合流しようか」


え〜となんでついてくる流れになってるんですか?ガネーシャ様。


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読んでいただきありがとうございます。

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